ハーメルン
キャスターが最強のSHINOBIを召喚したそうです
ついにマダラが最強の敵と出会ったようです
追跡したライダーの陣営は、実に多くの情報をマダラにもたらした。
本来のマスターであるサクラという少女は消極的な性格で、争いを好んではいなかった。だが彼女の兄――ライダーを引き連れていたあの傲慢な小僧の事だ――が、サーヴァントを強引に召喚させた結果の参戦だった。
故に彼女は一切の戦闘や諜報活動には参加していない。ただ漫然と普通の生活を送っているだけだ。刻まれた令呪を密かに隠しながら。
恐らく彼女はあと何日も生き残れないだろう。愚かで無能な兄によって自らのサーヴァントを失い、いずれは誰かの手に掛かって命を落とす事になる。
そして皮肉にも、少女の生活に関わる人間の中には二人のマスターが潜んでいた。
一人目は彼女が“先輩”と呼んで慕う少年だった。大きな魔力こそ有していないが、左手に令呪を宿している。そして家の中に控えさせている金髪の女からは普通の人間にはない気配を感じた。クラスは不明だが、あれが奴のサーヴァントと見て間違いないだろう。
もう一人はトオサカと呼ばれる小娘で、こちらの名前には覚えがあった。
聖杯が与えた予備知識――聖杯戦争を作った“始まりの御三家”という名前の中に“遠坂”というものがある。女の持っている魔力の量や、普段から何かを警戒するような素振りからしても、その遠坂に間違いない。こちらのクラスも分かっていないが、残った枠からして三騎士クラスの残りかバーサーカーのどちらかだ。
これで身元の割れたマスターが五組。残りはランサーを含めた二組だが、時が経てば自然と判明するだろう。今はまだ捨て置いていい。
失った右目の報復をするべく既にいくつか道筋は出来ている。後はどれだけ確実に実行できるかの問題だ。
――まだ動く段階ではない。だがこの落とし前は必ずつけさせてやるからな。
脳内にさまざまな筋道を組み立てながら、マダラは聖杯戦争が新たな局面に進むのを今か今かと待ち続けていた。
◇
“始まりの御三家”の一つを担うアインツベルン家は、一流の錬金術師の家系として魔術師たちの間では広く知られている。
彼らは類稀なる才能によってあらゆる物を作り出すが、中でも
人造生命体
(
ホムンクルス
)
の製造や貴金属の扱いにおいて右に出る者は居ない。それは聖杯の器を鋳造するという役割を担っている事からも明らかだ。
そんなアインツベルンのマスターであるイリヤスフィールは、今回の聖杯戦争において早くも勝利を見出していた。
未だ全てのサーヴァントが召喚されてから数日と経過していない段階である。実力を隠して様子を窺う者、徒党を組んで不利を覆そうとする者が居たとしても、何らおかしくはない。情勢は不安定でまったく油断ならない時期だと言えるだろう。
にもかかわらず、彼女はそれを確信するだけの理由があった。
前回の聖杯戦争を裏切りによる敗北という形で迎えたアインツベルン家は、そこから得た苦い教訓を元にある一つの方針を固めた。
それは『最強のサーヴァントからあえて思考を奪い、絶対に信頼できるマスターにのみ隷従させる事』である。
サーヴァントもマスターも元を正せば一人の人間――長年に渡って目指してきた一族の悲願が心変わりで台無しになる事など、もう二度とあってはならない。
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