第11話 ローテーション
まずは直近の休みの日、標的に近い備品管理局長と小山を呼んで考えを伝えてみた。備品管理局長の三崎ちゃんによると、まずこの方針を支持基盤に呑ませるのがかなりの難題だろうとのことだった
被服科、農業科のローテーション実習システム導入による学費格差の是正
すなわち設備などの理由から学費が普通科より高めのそれらの学科の学費を、彼らの短期研修名目の実習による生産と引き換えに取り消すというものだ
これにより表面上の学費が対等になれば、職人連合はフォーラムへの抵抗の意義を失う。結果としてそれを実現したフォーラムに接近する、公正会の時に近い技だ
だがハッキリ言って裏は見えているようなものだ。それに何より……
「被服科の教員陣がこれに同意するか見通せません。ローテーションということは授業時期にも時間差が出ることになりますので」
「各期間の教員の負担はクラスが減るから減る、それでなんとかならないかい?」
「そうなると現状組んでる授業スケジュールを大幅に組み替えることになります。被服科だけでも教員が100人以上いるんですよ?その全員の合意を得て進めるのは、しかも今年中は……」
「それに杏、これだと研修で利益出さなきゃいけないでしょ?農業科は農協に卸せばいいけど、被服科は企業呼び込んでやるなんて可能なの?」
「そこに関して、またその相手企業も信頼できるところでないと、説得はできないでしょうね。さらに農業科は既に実習を行ってますから、そこからさらに拡大することへの反発も避けられません」
「被服科ならまだその点は進められるかもしれないけど……それ抜きでも今年中は厳しすぎるよ」
時間がない
今はもう11月下旬。ここから4月の開始は教員陣の説得で精一杯、というのが2人の見解だ。来年のスケジュールは結構埋まっている。これを学科一つ分ひっくり返すのだから無理もない
「……時間ね」
「少なくとも来年度から導入は避けるべきでしょう。それとこの人員ローテーションを呑んでくれる企業の確保。そこ次第かと。それ抜きでもかなり厳しいでしょうが」
「……分かった。話が聞けてよかったよ」
「……はい」
だが……
「企業はアテを探ってみるよ。あとは学科への持ち込みも」
「は」
「え?やるの?」
「……他に……職人連合をフォーラムに取り込む上で有効な策があったら聞くけど」
「職人連合を……ですか?」
「杏……」
「そうだ。私の代で、学園の闇には霧散していただくしかない。その為にも……フォーラムを強くさせつつ、恩を売る
これさえ通れば普通科と農業科、被服科の学費の差はほとんど無くなる。そしたら職人連合がフォーラムと対立する理由は無くなるさ
その為に他にできることがあれば聞くよ?」
「た、確かにこれができれば大きな恩を売れるかもしれません。しかし……できなければ意味がありません!」
「……杏」
小山が一際低い声で私を呼んだ
「本当に……何を……考えているの?」
「簡単な話さ。私たち生徒会が予算の主導権を握る。部活とか学科とか、そういう枠があるから議会だと妥協した代物しかできない。
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