今日は入学式。
ぼくは着替えを終え、出かける準備を終えようとしていた。
かばんの用意はしてある。ひとまず、必要なぶんのいろいろなものを詰め込んでおいた。服はもう制服だ。似合うか聞いたら「そこそこ」とのこと。
家を出て、スイコちゃんと合流しそこからいろいろを乗り継ぎ、雄英高校に到着。あまりの広さに迷子になりそうになりながら、自分のクラスへと向かう。
そういえば、スイコちゃんとはクラスが分かれた。スイコちゃんが1-B、ぼくが1-Aだ。ぼくと違ってそこそこおとなしめだったらしいので、そのくらいの点数は当たり前かなぁ、といった感想である。
ともあれ、ぼくは教室に到着した。大きな扉を開くと、こちらを向くのは多くの瞳。それに臆さずにてけてけと、自分の席はどこかと探した。
席は指定されていた。とりあえず自分の席に座り、かばんを置く───どうしていいのかわからなかったので、とりあえず自分の足元に置いておくことにする。
……暇だ。せっかくなので、心の声でも聞いて遊ぼうと思ったが、それはそれで煩わしいのですべてを無視することにする。
心の声を無視するのにも慣れてきた。昔のおぼつかなさが嘘のようだ。とりあえず、机に顔をくっつけた。眠くはない。眠くはないが……どことなく退屈。
退屈なのだ。
と、思っていたらとてとてとこちらに向かってくる姿があった。
「俺は市立聡明中学の飯田天哉だ」
「よろしくー。んーと……死染妖狐。気軽にジョンとかって呼んでね。たしか試験会場一緒だったよね? あの速い人だ」
「君はあの、腕を治療した人なのだろう? 君ならば合格するのも納得だ。これからよろしく頼む」
「うんうん。よろしくね」
「こちらこそ」
「よろしくね」
「ああ、こちらも……って何回やるんだこのやりとり!?」
よろしくねは相手が打ち切らない限り続くものだと思ってた。
手持ち無沙汰にしっぽを撫でる。
時間を見ると、まだまだ余っている。少し早く来すぎたかなぁと思いつつ、耳をぴこぴこと動かして遊んだ。
てしてし。しっぽがゆらゆら揺れる。
がらりと扉が開かれた。
「……………………」
入ってきたのは、目つきの悪い一人の男子。入学初日だというのに制服を着崩している。雑に扉を閉めて、彼は自分の机へと向かっていった。
そのまま椅子を引き、机に足を乗せた。
「───ちょっ、君!」
「あァ?」
「机に足をかけるな! 雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」
「思わねーよてめーどこ中だよ端役が!」
……これはこれは、なんともヒーローとは思えない言動だ。
ひょっとするとぼくと同じような形で、敵が潜入しているのかもしれない。そうだったら仲良くできそうだ。棘のある性格も、弔が怒ったときと考えれば途端にかわいらしく見えてくる。
「ぼ……俺は市立聡明中学出身、飯田天哉だ」
「聡明───!? クソエリートじゃねぇかぶっ殺し甲斐がありそうだな」
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