吐息が白く染まる。
───冬。
現在、ぼくは服を着込んでゆっくりと街を歩いている。日本各地を転々と回るような旅なので、ぼくは街の移り変わりなどに関して実感することはないのだが、しかしイルミネーションが出来上がっていくのを見ると、なんというかクリスマスが近いのだ、という感傷に浸る。
あんまりにも寒いので、さすがにパーカーではいられない。もこもことしたコートで覆っているし、こっそりと体内に火を灯しているので一応快適に過ごせている。
これでぼくが氷も使えると夏の対策ができるのでなおよしだったのだが、しかし残念ながらそういうことはなく、ぼくは炎しか使えない。それもごく小規模なものだ。
思うに、ぼくに遠距離攻撃の適正はないのだろう。そんなことをする暇があるのなら、走って殴れと言われているような気分になった。
冬は意外に嫌いではない。何故だかわからないけど、寒さが昔を思い出させるのだ。
ひょっとすると、ぼくの生まれは冬なのかもしれない。
───そういえば、弔の誕生日は春はじめだったなぁ。
そんなことを思い出して、せっかくなので今のうちから誕生日プレゼントを考えることにしようと思った。そもそもぼくに短い間で誕生日プレゼントを決められるわけがないのだ。期間が近くなって慌てるぼくの姿が目に浮かぶ。
と、いうことで大型ショッピングモールにいくことにした。
ここにくれば、だいたいのものは揃うだろうからだ。そういう触れ込みなのだから、そういうものなのだろう。それを信用してぼくはそこに入る。
お金はそこそこ持っている。先生からお金をもらっているからだ。先生の仕事を手伝うと、お小遣いという形で先生がくれる。
……が、それがあまりにも大きい額なのでもらった額を使い切るのはいつになるのかなぁ、といった感じである。
ショッピングモールの中で、弔が一番喜ぶところといえば? ……ゲームだろうか。なんのゲームがいいのだろう。周囲をちらちらと見回して、宣伝文句を見回していく。
弔はなんだかんだどういうゲームでも好んで遊ぶ。最近は忙しいのであんまりやっている姿を見ないが……しかし、なんだかんだ弔は難易度の高いゲームが好きなように思える。
どれがいいのかなぁ、と思っていると、話しかけてくる姿があった。
「どうしたの?」
「……あ、ぼくです?」
「ええ、そうよ。あんまり唸ってるから、なにを悩んでいるのかなって」
「あー、とむら……えっと、友達……? の誕生日プレゼントで迷ってて」
「ふんふん。その子とはどんな関係?」
「え、えと? どんな関係って……」
どんな関係、か。ぼくと弔の関係ってどんなものなのだろう。考えるとわからなくなってくる。
……ぼくは狐で、弔は人だ。そしてぼくはほとんど弔に養われている。
……これは?
「……ペットとご主人様?」
「……………………わぁ」
こちらを見る目が少し、変わったような気がする。
「……ひょっとして、恋人?」
「うぇっ? ……いや、とむらとぼくはそんな関係じゃないですよ?」
「でもペットとご主人様って……」
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