いや、俺の勝ちだ!
恐怖──
たしかに俺はいま初めて、この世界の人間に恐怖を抱いた。
なぜ、と自分に問う。
簡単だ。それはサカキが、今まで出会った誰よりも強く恐ろしい男だからだ。
先日のナツメとの戦いは不思議と恐怖は感じていなかった。サンダーがいたから? みんながいたから? わからない。
俺はいま、未知の領域へと踏み込んでいる。
それが怖い。
だが、戦わなければならない。ここで、ロケット団を完全に終わらせるために。
「改めて自己紹介をしよう。私がこのトキワジムのジムリーダーにして、カントー最強のジムリーダー。そして、このカントーを裏で牛耳っているロケット団の首領・サカキ」
「……レッド、マサラタウンのレッドだ」
「ふふっ。この時を待っていたぞ、レッド。まずはよくやったと誉めてやろう。数々の作戦を妨害し、幹部をも倒して、ついにはロケット団を壊滅に追い込んだその強さを」
「御託はいい! いいから俺とバトルしろ!」
「まあそう焦るな。まず初めに言っておこう。ここには私一人だけだ。他の団員はいない。まさに正真正銘の真剣勝負。加えて──」
「……?」
突然サカキが着ているジャケットを脱いで横に払うとフィールドにボールが落ちた。ボールは6個、訳が分からない。
「何の真似だ」
「なに、ちょっとしたハンディをやろうと思ってな。お前は普通にポケモンを出していいが、私はここから落ちているボールを拾ってポケモンを出す。もちろん、どれに何が入っているかは運次第だ」
「……断る!」
「ほう」
「ハンディを貰った状態でお前に勝っても意味はない! いいだろう、お前の戦い方に乗ってやる」
レッドもまた六個のボールをフィールドに投げたあと後ろに下がる。サカキと同じぐらい自分とボールの距離を保っている。これで、互いに手持ちポケモンはいない。何をするにも目の前にあるボールを取らなければいけない。
「そうこなくては面白くない。では……いくぞ!」
「!」
両者が一斉にボールへと駆け出した。先手は──レッドだった。
ボールを投げ現れたのはフシギバナだった。
「はっぱカッター!」
──フシギバナのはっぱカッター!
相手がまだ分からない以上無難な攻撃をするしかない。だが、フシギバナのはっぱカッターは虚空を斬り裂くだけだった。
「な──!」
「はっぱカッターか。威力はそこそこだが、急所によく当たる。悪くない選択肢だ。だが──」
「──! フシギバナ、後ろにつるのムチ!」
「ほう!」
フシギバナの体格上、後方の確認は困難であるが見事つるのムチでサカキのポケモンを捕らえた。
だが、そのポケモンはレッドの驚くべきポケモンだった。
「パルシェンだと⁉」
トキワジムはじめんタイプ専門。ゲームでも使ったことがないはずだった。それがなぜ。
「完全に後ろ取ったつもりだったが、よく捕まえたな。まあ関係ないが。パルシェン、れいとうビーム!」
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