西住まほの死
きっとそんなものはありはしないとわかっていながら。
私はそっと先輩の手を取る。
「貴方が地獄に落ちるというなら私も最期までお供します」
私は先輩の手を握り締めながら誓いの言葉を紡いだ。
罪があるのは私も同じだ。ならば私にも同じように罰を受ける義務がある。
だから。
私はこれからも先輩の傍に居続けるべきだ。
果たしてそれが私の本心なのかはわからない。
でもひとまず私は自分の気持ちをそう結論付けることにした。
そうして決意も新たに部屋の中を見渡すと。
あちこちに空き缶が散乱する惨状が視界に広がっていた。
今日は土曜日で大学の講義はないが、戦車道の朝練はある。朝練自体は6時からだが、早い人なら30分前には来る。
それまでにこの部屋を元の状態に戻さなければいけないわけだ。
……我ながら何とも締まらない。
私は嘆息しながら腕まくりをして、空き缶を一つ一つゴミ袋に入れ始めた。
これから先、先輩や私がどうなるかなんてわからない。
でもとりあえず一つだけ言えることはある。
それは。
二度と先輩には酒を飲ませちゃダメだということだ。
そんな私の決意とは裏腹にこの日以降私は頻繁に先輩に飲みに連れて行かれることになる。
過労で倒れる心配がなくなった代わりに二日酔いで寝込む羽目になるなんて、まったく笑い話にもなりゃしない。
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