第12話『奏でられる音色』
「海未ちゃんも別に意地悪したくて言っている訳じゃないと思うよ」
ことりは拗ねている穂乃果を宥める。
拗ねた穂乃果は頬をぷくーっと膨らませる。
(二人のいがみ合い、仲直りするまで苦労するんだよねぇ…
私がいなかった間、ことりはどんだけ苦労したんだろうか…)
南ことりという人物は基本的に自分の意志をしっかり伝える方ではなく、二人から一歩離れた立場で物事を眺めているタイプである為、こんな感じに二人の板挟みにあうのだ。
「ことりちゃんはどうなの?スクールアイドル」
「私は良いと思うなぁ。それに可愛い服着られるし」
穂乃果に対し笑顔で返すことり。
そう言えば昔からかわいい服とか好きだったなぁ…とか考えていたあかりだったが
「おっと、そろそろ時間だから私は教室に戻るね」
「うん!じゃあまた後で!」
スクールアイドルを始めるに当たってやるべき事はグループ名は勿論の事、練習場所や曲の作成など多いのである。
グループ名や曲は穂乃果達に任せるとして、あかりは練習場所を探した。
「やっぱり此処かなぁ…雨が降ると使えないけど、広くて音を気にしなくて良いし」
とあかりが屋上を見回してそう呟くいた後
「これは…ピアノの音…?」
聞こえてくるピアノの音を探って辿り着いたのは音楽室だった。
中で演奏していたのは赤毛の女生徒。
“学年”はあかりと同じ一年生であり、その演奏する姿は幻想的でとても美しかった。
演奏が終わるのを見計らい、あかりは音楽室に入った。
演奏を終えた少女にあかりは拍手を送った。対する少女はあかりの存在に驚くと同時に自身の演奏を聴かれていた事が恥ずかしかったのか顔を少し赤くしていた。
「確か…頼尽さん、でしたよね?」
「うん、そうだ。西木野さん、何時も此処で演奏してるの?」
あかりの言葉に少女―西木野真姫は頷いた。
「それにしても凄かったよ~!思わず見とれちゃったよ!」
「あ、ありがとうございます…」
照れる真姫。
「う~ん、こんなに上手いなら歌手やミュージシャンとして充分にやっていけると思うよ」
「…さっき来た2年生にも同じ事を言われましたよ」
「2年生?」
「はい、さっき2年生の人が来たんです。
…その人は私にアイドルやってみないって勧誘しに来たんですよ」
あかりの頭にある人物の姿が浮かび上がってくる。
勧誘なんて事をしてくる人物はあかりの知ってる中で一人ぐらいしかいない。
「そ、そうなんだ~それはそうと同じ学年なんだしもうちょい砕けた喋り方でもOKだよ」
「えっ、うん…わかったわよ…」
それから二人は世間話をし始めた。
世間話と言っても殆どあかりが一方的に話して、真姫が相槌を打つといった感じである。
帰ろうと思えば帰れたかもしれないが、真姫は付き合う事にした。
西木野真姫という少女は何だかんだで押しに弱い所があるのだ。
「いや~、やっぱり帰国子女だからとか年齢が年齢だからとかでみんな遠慮してるからなのか同学年の子から中々話しかけられないんだよね。
まぁ、話しかけづらいと思ってる私の方に問題があるかもだけど」
あかりは他のクラスメートより1歳年上―普通に学生生活を送っていれば二年生になっていた筈である。
「…昼休憩は何をしてるの?」
「基本的には同い年の従姉妹や幼なじみとランチタイムか生徒会副会長とトーキングタイムかな」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク