第15話『START:DASH』
曲の存在は大きかった、とあかりは思っている。
曲が出来上がって目標は明確に定まった事により、練習の質は大幅に上がったのだ。
今までの基礎体力アップも引き続き行われているが、曲が出来てからは振り付け練習も行われている。
「ワンツースリーフォー!穂乃果ちょい早い!
ファイシックスセブ、ことりそこちょい遅れてるよ!」
マネージャーであるあかりは手拍子でリズムを取り、ダンスの振り付けがちゃんと出来てるかなどを見ていた。
リズムも時計の様に正確に刻み、ダンスも振り付け表を貰ったその日の内に頭の中に叩き込まなければならないが、ある事情から“普通の人間”でないあかりにとっては造作もない事である。
「はいフィニッシュ!みんなお疲れ様!だいぶいい感じになってきたよ!」
あかりは3人にスポーツドリンクを手渡し、自身も微糖の缶コーヒーを一気に飲み干す。
この缶コーヒーはコーラに並んであかりの愛飲している飲み物の一つである。
何かをする前に気合いを入れたい時や一息ついてリフレッシュしたい時にピッタリなのだ。
「ええ。穂乃果がここまで真面目にやるとは思いませんでした。
寝坊してくるものとばかり思ってましたし」
「大丈夫!その代わり授業中に沢山寝てるし!」
「それは大丈夫じゃないから」
さり気なくツッコミを入れるあかり。
「あ!」
立ち上がった穂乃果は何かを見つけ、階段下へ駆け出す。
「お~い!西木野さ~ん!真姫ちゃ~ん!!」
「大声で呼ばないで!」
「何で?」
!恥ずかしいからよ!」
「あっ、そうだ!あの曲、三人で歌ってみたから聴いてみてよ!」
あかりから音楽プレイヤーを受け取った穂乃果は真姫に勧める。
「はぁ?何で?」
「真姫自身が作った曲なんだし聴いてみなさいな」
「だから、私じゃないって何回言えば…!」
あかりの言葉を否定する真姫。
「真姫、私の耳は誤魔化せない、その歌声でバレバレだよ」
あかりはそう言った後、穂乃果の方を向いてアイコンタクトを取り、頷いた穂乃果は真姫の右耳に手早くイヤホンの片側を入れる。
「海未ちゃん!ことりちゃん!」
穂乃果の呼びかけに
「μ's!」
駆け寄ってきた海未と
「ミュージック!」
ことりも加わり
『『スタート!』』
四人の掛け声に合わせて音楽プレイヤーはその曲を再生するのだった。
翌日の昼―新入生歓迎会当日の昼。
「―了解」
あかりは通話を切るがその様子は不機嫌だった。
こんな重大なタイミングで仕事が入ったのだ。
「…ごめん。…急用が入った」
とあかりは三人に謝罪する。
「私、今はμ'sのマネージャーなのに…皆に迷惑をかけて…大事なライブにも遅れるかもしれない…」
あかりの顔は悔しさや申し訳なさでいっぱいだった。
「迷惑なんかじゃない!あかりちゃんは私達の為に一生懸命に頑張ってくれてるよ!」
「此処は私達に任せてあかりは行ってください」
穂乃果と海未の言葉に
「…ありがとう!ライブに間に合うようにちゃちゃっと終わらせてくるよ!」
あかりは礼を言い
「あかりちゃん、私達、あかりちゃんが必ず来るのを信じてるから行ってきて!」
ことりの励ましに
「約束する!」
と返してあかりは現場へと向かった。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク