第16話『あと6人は…』
ファーストライブの翌日、昼休憩の屋上。
「やっぱりメンバーが欲しいなぁ…」
あかりは缶コーヒーを飲みながらそう呟いた。
「部が認められるにはあと一人。活動自体、認められているものの部が認められない限り、部費も貰えませんし…」
海未の言うとおりである。
現在の四人の最重要課題はメンバーの確保であった。
最低でもあと一人はいないと部活として認められないというのが部の設立規則である。
現状では活動自体認められているものの部費がないのは少々つらいのだ。
「(二人…いや“5人”には目星は付けてるけどね)一刻も早く探さないと…」
あかりの言葉に
「そう思って、もう学校中にメンバー募集のお知らせをしたんだよ!」
「今日の朝、穂乃果ちゃんと海未ちゃんとで新しいポスターに貼り替えたんだ」
「あとは地道な勧誘ですね」
「よし、じゃあ私も目星をつけている子達に話しかけてみるよ」
あかりの言葉に
「どんな子達なの?」
尋ねることりに
「それはまだ秘密。それに、話を受けてくれるかどうか分からないし、まぁ此処は私に任せておいてよ」
とあかりは返した。
(まずは彼女にアタックを仕掛けてみるか…)
授業を真面目に受けつつあかりは勧誘しようとしている人物の事を考えていた。
(西木野真姫…作曲能力はさることながら歌唱力の面でもかなりの戦力になる…)
あかりが勧誘しようと考えている人物―その一人目は真姫であった。
放課後。あかりは真姫の元を訪れた。
「真姫、ありがとうね」
「何の話よ?」
「μ'sの曲の話だよ」
「だから私じゃないって」
「いやいや、私の耳は誤魔化せないよ。正直に白状しないと…と思ったけど、まぁそう言う事にしておくよ。
ねぇ、真姫。またピアノ、弾いてくれないかな?」
あかりの言葉に真姫は頷き、一曲を弾き始める。
演奏が終わった後、あかりは拍手をして本題を話し始めた。
「ねえ、真姫」
「今度は何よ?」
「μ'sに入る気はない?」
その言葉に真姫は迷っているかの様に見えた。
「迷ってるのかい?」
「どうしてそう思うのよ?」
迷っているのは事実だが、真姫は何故そう聞いてきたのか気になったのだ。
「いや、ただの感だよ、感。μ'sの曲―『START:DARH!!』の作曲だって最終的には引き受けてくれたしもしかしたら…って思ってね」
「生憎だけど、私、大学は医学部って決めてるのよ。両親の意志を継ぐために。だから、私の音楽はもう…」
「じゃあ、何故此処でピアノを弾いてるんだい?」
あかりの言葉に真姫は言い返せなかった。
「まだ音楽を続けたい、そう思っているからピアノを弾いているしゃないかな?」
あかりは静かに立ち上がる。
「まぁ、どうするかは真姫自身の自由なんだけど、“私みたい”に後悔だけはしない様にね」
去ろうとするあかりを
「待って!」
と真姫は引き留める。
「あかりは後悔している事があるの…?」
「取り返しのつかない後悔をした、それだけだよ」
そう返すあかりは何処か悲しげに見えた。
「後悔しないように、か…」
あかりが帰った後、真姫はμ'sのポスターを見つめながらそう呟いた。
「スクールアイドル…μ's…」
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