精霊との生活
一瞬のうちに士道の網膜が、視神経が、脳細胞が、振動して、発熱を起こし、爆裂させる。
芸術的とさえいえる美しい肢体、手のひらに収まるくらいの乳房、きゅっと締まったウエスト、柔らかそうな臀部。世の少女達が、嫉妬と羨望を通り越して崇敬の念さえ持ってしまいそうな、魅力的かつ神秘的な裸体がそこにあった。
「な・・・・ッ、し、シドー!?」
「! あ、や、ち、違うんだ・・・・! これはーーー」
≪一体何が違うと言うのだ? このムッツリスケベが≫
「う、うるせえドラゴン・・・・!」
「いッ、いいから出ていけ・・・・っ!」
「ぐぇふッ・・・・!?」
士道は見事過ぎる右ストレートを鳩尾に食らい、後方によろめきながらも耐えていた。こう言う時ほど、魔獣ファントムとの戦闘で培った耐久力に感謝してしまう。
そして十香は間髪入れず、ぴしゃん! と脱衣所の扉を閉めた。
「ーーーけほッ、けほッ・・・・あ、あんにゃろ、本気で殴りやがって・・・・」
≪バカが。精霊である〈プリンセス〉が本気で殴ればお前の上半身と下半身は永遠にオサラバしているわ≫
ドラゴンに言われて士道は咳き込みながら、確かにと思った。
と、脱衣所の扉が少し開かれ、頬を真っ赤にした十香が顔を覗かさせた。
「・・・・見たのか、シドー」
「・・・・・・!」
じとーっとした視線の十香に、本当はちょっとだけ見てしまったが、そんな事を馬鹿正直に答えるほど士道もバカではないので、ブンブンと首を振った。
一応納得してくれた十香が「むう・・・・」とうなってから、扉を全開にして、いつもの来禅高校の制服ではなく、おそらく琴理が貸し与えただろう、士道の部屋着を着ていた。
一回りサイズがちがうせいか、襟元からチラリと見える風呂あがりで妙にエロい。
士道は十香に指を突きつけて叫ぶ。
「な・・・・っ、なんで十香がうちにいるんだ、十香・・・・っ!」
十香は学校が終われば、士道のクラスの副担任として在籍している、〈ラタトスク〉の解説官の村雨令音と共に帰宅していた筈。
しかし十香は、士道が何を言っているのか分からないといった感じで首を傾げ。
「何? 妹から聞いていないのか? なにやら、ナントカ訓練だとかで、しばらくの間ここに厄介になれと言われたんだ」
「何ぃっ!? 訓練・・・・!?」
士道は、つかつかと歩いてリビングの扉を乱雑に開くと、ソファに座っていた白いリボンでツインテールにしていた琴理とお邪魔していた令音がおり、事情を聞くために琴理の部屋に向かった(『ドレスアップ』で制服から私服に着替えた)。
「とりあえず聞いてくれ、“しんたろう”」
「“しんたろう”じゃなくて“士道”です」
「・・・・ああ、そうだった。訂正しよう。悪いね、“シン”」
「・・・・・・・・・・・・」
≪もはや愛称になったな≫
「実は二つほど理由があってね・・・・」
話が進まないので、士道は諦めて、話を聞いた。
曰く、十香の霊力は士道の口づけにより、士道の体内に封印した。
その話を聞いて、ドラゴンが、ピクリっと反応したが、士道は気にしている余裕がなかった。
そして、現在士道と十香の間には目に見えない経路<パス>が出来ており、十香の精神状態が不安定になると霊力が逆流してしまい、あの超常の力をまた振るう事になる、考えただけで恐ろしい。
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