未来消失2017
「戦闘、終了しました。お怪我はありませんか、所長」
戦闘は恙なく終了した。
マシュ・キリエライトの防御力は、傍から見ているだけでも相当なものだと分かる。
あの大盾と、それを支える尋常ではない力を繰り出す細腕。
これらは普通の人間と大差ない戦闘力の骸骨どもでは、どうあがいても突破できないものだ。
戦闘の終了を告げる彼女の声を聞いて、ハラハラしながら見ていた立香もほっと息を落とす。
「…………これは、いったいどういうこと?」
だが所長の様子が真逆だった。
怒りか何かを堪えているかのように、眉を吊り上げている表情。
そんな彼女の様子に、マシュ・キリエライトは小首を傾げる。
「所長、どうかなさいましたか? ……あ、わたしの状況ですね。
信じがたい事だとは思いますが、実は―――」
「サーヴァントと人体の融合、デミ・サーヴァントでしょう。
その様子や今の戦闘を観ればそんなのすぐにわかるわ。
わたしが訊きたいのは、どうして今になって成功したかって話よ!」
マシュに対してそこまで言葉を発して、しかし彼女ははっとして言葉を止めた。
すぐさま所長はマシュの後ろに待機していた二人の人間に目を向ける。
「―――いえ、それ以上にあなた! あなたよ、わたしの演説に遅刻した一般人!
それだけじゃないわ、そっちもよ! そっちの一般人枠その2!
話が終わってミッション始動の指令を出したにも関わらず、ぼけっと天井を見てた奴!」
「ふぁいっ!?」
「俺も?」
立香にぐいぐいと詰め寄ってくる所長。
さっきまで心が折れていたとは思えない切り返し速度。
悲鳴を聞いて大丈夫かな、なんて心配していた一般人二人。
彼らは魔術師が発揮する頑強さを、よーく思い知ったのであった。
「なんでマスターになっているの!? サーヴァントと契約できるのは一流の魔術師だけ!
アンタみたいなずぶの素人なんかがマスターになれるハズないじゃない!
白状なさい、アンタその子にどんな乱暴を働いて言いなりにしたの!?」
立香が一流魔術師になったようなので、拍手を送る。
拍手してた手を叩き落され、怒られた。
立香やソウゴからすれば、そもそも魔術師というのはなんぞやという話だ。
そんな相手の言い放題な物言いに対して、マシュが前に出て反論を始める。
「それは誤解です所長。強引に契約を結んだのは、むしろわたしの方なのです」
「なんですって?」
マシュのその言葉に胡乱げな表情。
とりあえず怒りながら罵声の洪水、という状況は回避できた。
が、まだ言葉が足りないようである。
「経緯を説明します。その方がお互いの状況把握にも繋がるでしょう」
そう言って彼女は火の海と化した管制室から今に至るまでの状況を語りだす。
それを聞いている間、オルガマリーの顔はずっと渋かった。
どころか、聞いている内にどんどんと渋さが増していく。
「―――以上です。わたしたちはレイシフトに巻き込まれ、ここ冬木に転移してしまいました。
他に転移したマスター適性者はいません。所長がこちらで合流できた唯一の人間です。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/10
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク