女神の警告その1
「……えーっと、アイツら手当てしないで良いの?」
コイツら、よく見たら当てたはずの弓が刺さっておらず、回復までしている。
さっすが、クズ女神の分霊だなぁ。
顔がいいからアレだが、感心してしまう。
「私たちはあの雑魚に無理やり戦わされていただけなんですわ」
「……はぁ」
ま、下手に相手にいちゃもんつけてくるやつなんてのたれ死んでも知らんが。
「……レイファ、帰ろう」
「え、でも……」
「あー、あとでギルドには報告するさ。そしたら誰かが回収してくれるだろ」
「う、うん……?」
レイファも承服はしかねる感じではあるが、襲ってきた以上俺もアイツらを手当てする義理もない。
そこは分かっているのか、レイファは大人しく俺についてきた。
「私達も付いて行きますわ!」
「……勝手にしてくれ」
うーん、コイツらどうしようかな。
仲間にでもしてみろ。
レイファがライノのように娼館に売られる未来しかないだろう。
つまり結局は俺の敵だ。
ただ、殺すと制約に引っかかりそうな気がするので、どうするかは悩みどころである。
それに、レイファの教育にも、俺の性格が歪みかねない懸念から考えても、一緒にいるのも悪い事だろうしな。
正しい波の尖兵ならば「俺の正義に目覚めた」と思うところなんだろうが、俺にはやはりクズにしか見えない。
本当に、なぜ俺が波の尖兵として送られたのだろうか?
さて、結局名前の分からなかった阿呆のことについてはギルドに報告して、クズ女神の分霊供とはなんとか穏便に別れた。
「ソースケ様と一緒に旅をしたいです」
などと言っていたが、俺はすでに契約済みの冒険者である事、契約を切るつもりがない事を説明して、帰ってもらった。
どうやら、この2人はメルロマルク国内のどこぞの領主のお嬢様らしかった。
なんとか別れる際に舌打ちをされたが、分かっていた事なので流す事にした。
「へぇー、見知らぬ冒険者にレイファを寄越せね……。坊主、よくレイファを守ってくれた」
「当然だ。レイファは俺にとっても大切な人だしな」
そう、言葉を覚えるのにも付き合ってくれたし、手取り足取りこの世界を教えてくれた大切な人の1人である。
ドラルさんも同じく、俺にとってはかけがえのない人だ。
この世界で言えば、父親のような存在だ。
年齢的に言えば、ドラルさんは34歳なので、父親というには若いけれどな。
「フッ……。では、宿に行くぞ」
「ああ」
「うん!」
と言うわけで、俺は宿に泊まる事になった。
その晩、夢を見た。
「勇者よ、菊池宗介よ。お告げをしに来ました」
その姿は、間違いなくクズ女神である。
「間も無く、あなたの国で第■■回ディメンションウェーブが開催されますわ。レベルを上げるのに好都合な設定にしておりますので、奮ってご参加ください」
「は、はぁ……」
「また、女性を侍らす事によって、貴方の冒険にとても有利になります。明日、1人の女性がセーアエット領城下町に到着しますので、仲間として迎え入れると良いでしょう」
「あの、あんたの呼んだ冒険者か何かをのしてしまったんだが、良かったのか?」
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