波の前のセーアエット領
魔法を覚えた俺は、ドラルさん、レイファと一緒に街を歩いていた。
「坊主の狩った魔物の素材を売りに行く」
との事で、俺たちは付き添いである。
セーアエット領城下町はそれなりに栄えている。
アニメで見たメルロマルク城下町ほどではないけれども、普通に都市として機能しているようだ。周囲を見渡せば亜人の冒険者や商人の姿を見ることができる。
亜人と言うのは、この世界では人間に尻尾やケモミミなど人間にない部位が発現している種族の総称である。
ちなみにレイファやドラルさんは、人間である。
「ああ、だから馬車に色々積み込んでいたのか」
俺は納得する。
ダッダッとラヴァイトが馬車を引いてこっちに向かってきていた。
「グアー」
「よしよし」
ドラルさんはラヴァイトを撫でると、馬車に乗って荷物を降ろす。
「坊主、手伝え」
「あ、ああ」
俺もドラルさんを習い、馬車に乗り込み積荷を降ろす。
「ドラル!」
「買取商か」
買取商らしき、商人と言った出で立ちの恰幅のいいおじさんがやってくる。
「買い取って欲しい魔物の素材が溜まったのでな」
「ああ、連絡は聞いていたからな」
買取商が声を出すと、店員っぽい服装をした人が下ろした積荷を店の中に運んでいく。
「しかし、たまにしか売りに来ないが今回はえらい量だな」
「ああ、そいつを世話しててな。武器を選ばず魔物を倒せるから、素材収集を任せている」
おそらく俺のことだろう。俺はどの武器を使ってもしっくり来ない。一応、ドラルさんに言われて剣、槍、弓全てを使うようにしているが、どうにもしっくり来ない。
単に鍛錬不足だろうがな。
レベルさえ上げればだんだん武器が使いこなせるような気になってくるのが恐ろしいところである。
そして、昔はそこまでではなかったのだけれども、つい調子に乗ってしまいがちになっている気がする。
褒められて嬉しいのは当然だが、気をつけないと天狗になってしまいそうになる。
「……確かに、人手が増えたらできることも増えるからな。ここ最近だと波の影響か魔物が活性化しているにもかかわらず経験値は変わらない状態が続いているからな。そうやって地道に魔物を討伐するのは良いことだろうな」
買取商はそう言いつつも運び込まれる魔物の素材をつぶさに観察している。
「おっと、あの素材は傷みが激しくて引き取れそうにないな」
そう言って、ウサピルの毛皮を荷物から取り出す。
確かに言われてみればあのウサピルの皮は他と比べて毛並みが悪く見える。
「そう言うのは捨ててもらって構わない」
「そうかい」
しばらく馬車から荷物を降ろしていると、最後の荷物になっていた。
「ふむ、これで終わりだな」
「そうだな、疲れたー」
俺は馬車の端で座って足をぶらぶらさせる。
「では、清算に1時間ほどかかると思うからそれまでの間は自由にしていたらいい」
「わかった。それではその間飯にでも行くとしよう」
と言うわけで、俺たちは食事に向かった。
向かったのは良くある飲食店だ。
中世のレストランという感じがする。
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