ハーメルン
戦姫絶唱シンフォギアAB
12VOLT

奏と翼。二人がツヴァイウィングとしてデビューしてから月日が経ち、ある程度余裕が出来た頃、奏は一人長野県へと来ていた。

向かうのは彼女の両親が死んでしまった採掘場付近の墓地であった。救助されて以来、ろくに墓参りをする事も出来ず、ノイズを殺す事だけを考えていて、両親達へと顔向けが出来なかったからである。

「今頃ってお父さん達は言うかもしれないけど、あの頃よりは心に余裕が出来たし、あの状態で家族に顔を合わせる事なんて出来なかったしな…」

独り言ちながら墓地に向けて歩いていく。数年も放置しといて家族は怒るかもしれない。だけど顔を合わせなかったらもっと怒るだろう。

「でも報告ぐらいはさせてもらえるかな」

そう言って採掘場にある亡くなった人達の墓の前に着く。だが、来ていなかったせいで少し荒れていると思われた墓は定期的に誰かが来ているのか小綺麗にされており、数ヶ月前にも誰か来ていたのであろうか、供え物が置いてあった。

「一体誰が…」

供え物を見ながら考えていると誰かがこちらに来ている事に気付いた。

長い金髪を三つ編みにした男。最近は全く見なくなったがその男を奏は知っている。

「…お前…」

「奏…」

ガンヴォルト。ここにいるのか最初は疑問に思っていたが腕の中にある花や袋の中に入った道具を見て、彼が墓参者だという事は分かった。しかし、何故?ガンヴォルトがここにと奏の中で疑問が生じた。

「なんでお前がここに」

「なんでって言われても奏と同じ理由としか答えようがないな」

ガンヴォルトは肩を竦めながら言うと墓の近くまで行き、手早く道具を取り出すと墓の掃除を始めた。

「何でお前が私の家族の墓を掃除しに来てるんだよ…」

「そんな事聞く前に奏も手伝って。その後でならいくらでも聞いてあげるから」

そう言って掃除する手を止め、奏に向けて軍手ときちんと折結ばれた袋を投げ渡した。奏はそれを受け取り、不満そうながら少し離れた所に行き、墓の周りを綺麗にし始めた。

定期的に整備にされていたお陰か、すぐに整備が終わりガンヴォルトと奏は共に線香をあげた。そして、墓地の少し離れた所にある休憩所に来た。

ガンヴォルトは持っていた飲み物の缶を一つ、奏に渡して休憩所の向かい合ったベンチに座る。

「さっきも聞いたけどなんであんたがここにいる」

「ボクが出来る君とその家族への償いのためだよ。こんな事で君に許されるとは思ってないけどね」

ガンヴォルトはそう言って持っていた缶を開けて一口飲む。

「償いのためだかなんだか知らないけどあんたが殺したようなもんだろ。それなのになんでそんな事をするんだ」

「だからこそだよ。ボクは君の家族に謝るためにもお墓まで来るしかない。無駄かもしれないけど家族への懺悔が考えた中で行える償いだから」

ガンヴォルトはそう言った。

「だからって人様の墓に勝手に」

「そう言う奏は家族の墓に来るのは建てられた時以外だと初めてじゃないのかい?」

確かに、今まで奏は墓参りには来る事が出来なかった。ノイズを殺すための訓練。最近はツヴァイウィングというユニットを組んでいるため、レッスンや打ち合わせなどで時間が取れなかったためだ。ガンヴォルトの言葉に対して何も言い返す事が出来ない。

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