19VOLT
黒服の男達と共に車に乗せられ連れてこられた先は最近通い始めたリディアン音楽院であった。車はリディアンの校門を何の躊躇いもなく通過していく。そしてリディアンの校舎の前に駐車する。
黒服の男達は校舎の前を警備するように辺りを警戒し始める。そんな中、響は先程の優男と翼と共にリディアンの中央棟へと歩いていく。
「あの、ここって先生達のいる中央棟なんですけど…」
響の問いに対して翼と優男は何も答えない。教師達専用のエレベーター前に到着するとエレベーターの扉が開き、中に入る。
優男がエレベーターのボタンのところに通信端末のような物を押し付けると壁から取っ手のような物が飛び出してくる。翼は無言でそれを握った。
「あの…これは?」
「危ないのでこちらに掴まっていて下さい」
優男が手錠をされた手を取り、取っ手を握らせる。そして優男も取っ手を握ると共に急速にエレベーターが下降し始めた。
「えっ!?えっ!?」
急下降し始める。下降したエレベーターはしばらくすると広いホールのような景観の場所に出る。そこには特殊な文様のような絵が壁にびっしり描かれている。
「あはは、私って今から何処に向かうんでしょう?」
「愛想は無用よ。ここからいく先には微笑みなんて必要のない場所なのだから」
「うぅ…」
突き放すように翼が言い放つ。その言葉に悲しくなる。無言の雰囲気のままエレベーターが目的地に着いた事を知らせるベルが鳴る。先程の言葉通りならここはとても重苦しい場所だと思われる。響は息を飲み、エレベーターの扉が開くのを待つ。そして開かれた先には…
クラッカーやパーティーのような会場。そして歓迎されているような形で沢山の人達が響に向けてクラッカーを放っていた。
舞い上がる紙吹雪。そして掲げられた垂れ幕には響の名前と歓迎の文字が大きく描かれていた。先程の言葉と真反対で響は固まってしまった。
翼はこの状況に呆れるように溜息を吐き頭を抑える。優男はそんな状況に苦笑いを浮かべていた。
「ようこそ立花響君!人類最後の砦となる特務災害対策機動二課へ!」
赤い髪の大男が代表して笑顔で響を歓迎する。
「えっ?」
「驚いているところ悪いけどお近づきの印に私とツーショット写真でもいかが?」
一人の白衣の女性が響にスマートフォンを持ちながら近付き、響を抱き寄せると写真を撮ろうとする。
「ちょっと待って下さい!手錠を掛けたままの写真なんてあとあと悲しい思い出にしかならないじゃないですか!」
そう言って響は女性から離れる。そんな様子を見る女性は残念そうな顔をしながら何処かへ行ってしまった。しかし、響は疑問に思った事を問う。
「どうして初めて会う私の名前の事を皆さん知っているんですか?」
「我々の前身は戦前に作られた特務機関であって情報収集などお手の物なのさ」
赤髪の男がそう言うと先程の女性がどこか見覚えのある鞄を携えて戻ってきた。それはリディアン音楽院の鞄であった。誰のと思ったが女性が鞄の中から響の写真が映された学生証を見せて、その鞄が自分の物だと理解した。
「女の子なんだから鞄の中身をこんなぐっちゃぐちゃにしちゃダメよ。モテる女は見えないところでもしっかりとしてるんだから」
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