ハーメルン
斯くして比企谷八幡は仮想現実にて本物を見つける。
第3話

《ソードアートオンライン》通称SAO。
次世代のフルダイブMMORPGとして発売されたそのゲームはHPがゼロになると、現実世界でも死んでしまうというそんなデスゲームになってしまった。

そんなデスゲームが始まり、1ヶ月の月日が流れていた。
普段なら年末やクリスマスが近づき、世間ががやがやし始める時期。
しかし、俺たちSAOプレイヤーはそんなのに浮かれるような心理状態ではなかった。

1ヶ月。
それだけの月日を費やしても未だに、第1層はクリアされていないからだ。
そして、このゲームの犠牲者は2000人を超えた。

「んで?現状はどうなってんだ?」

「ハー坊に言われた通り、ガイドブックは作成して道具屋とかで無料配布してるゾ。お陰でビギナーの死亡率はだいぶ下がったみたいダナ。」

俺は現在、第1層のトールバーナーという街にある広場の隅っこに置いてあるベンチに座っている。
俺が話しかけたのは情報屋と呼ばれるプレイヤー。
名前はアルゴ。
少し男勝りな話し方と顔の髭のようなボディペイントが特徴だ。

ちなみにハー坊というのは俺のことを指している。
そのあだ名のネーミングセンスは由比ヶ浜にも劣らない残念さだが言及したところでこの手のタイプは呼び方を早々に変えたりはしないのですでに訂正は諦めている。

彼女との出会いは数週間前にまで遡る。
一つのミスが死に繋がるSAOで必要になってくるのは情報だった。

そこで俺は一つの事を思い出した。
ベータテスター時代に情報屋紛いのことをしていた変な奴が居たことを。
名前だけは知ってはいたが面識はなかった為、アスナとともにレベル上げついでに奇妙な噂がある所に徹底して張り込みをさせてもらった。
ちなみに妙な噂というのは『ログアウトできる場所がある』などだ。

そして噂を確かめに来たアルゴと鉢合わせて、情報屋との繋がりを得ることができた。
そして俺は未だに《始まりの街》を出れていないビギナーの為に簡単なガイドブックの作成を依頼した。

アルゴも必要と思っていたようで、すんなりと受け入れてくれてアルゴを主体に俺も手伝う形でガイドブックを作ったのだ。

現在はアルゴが上手くいってるかどうかの確認と定期連絡のためにここにいる。

「ベータテスターの方はヤバイかナ。もう300人ほど死んでル。」

「なんだと?」

俺の知る限りだとベータテスターは1000人居たはずだ。
それが1ヶ月で300人。
現在の死亡者の10%以上を占めているのだ。

「・・・・理由は、β版との情報の差異か。」

「その通りダ。・・・・だが、お陰で正しい情報も手に入っタ。彼らの死は無駄ではなかっタ。」

俺たちベータテスターは第8層までの攻略法の知識は多少なりとも持っている。
しかし、その情報こそが死に繋がっている部分も少なからずある。
その情報を頼りに攻略をしていたテスター達は製品版に移行する際にできた変更点に対応しきれず、死に至ったのだ。

少し気を病むような会話の後、数秒の沈黙が流れる。

「・・・・アルゴ、一つ聞いていいか?」

「ん?なんダ?」

「なんでお前はベンチに座らず、後ろに立ってんだ?」

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