ハーメルン
番外個体の獣は少女と旅す
第2話 ステータスプレート

戦争に参戦する以上は自衛と戦う術を体得して磨かなければならない。
イシュタル曰くこの世界の一般人とは隔絶した力を秘めているそうだが、それで鼻を伸ばすのは些か傲慢であろう。
それにいきなりナイフを渡されて抵抗する相手を殺せと言われても不可能そのものだ。
イシュタルもそれはわかっていたようで、この教会のある山の麓の国が鈴達を受け入れるそうだ。
麓の国に行くには下山しなければならなくて、そのために今は教会の出入口にいた。
教会の正式名称は聖教教会と言って、山の山頂に建っているそうだが山特有の息苦しさがなく、鈴からしてみれば魔力の流れ(・・・・・)が感じるため強制的に住みやすい環境にしているのが分かる。
教会の外に出てまず出迎えたのは太陽の光を反射してキラキラと煌めく雲海と透き通るような青空という雄大な景色であり、鈴でさえ思わず見蕩れてしまった。
自慢気なイシュタルに促されて先へ進むと、柵に囲まれた円形の大きな白い台座が見えてきた。大聖堂で見たのと同じ素材で出来た回廊を進みながら促されるままその台座に乗る。
台座には巨大な魔法陣が刻まれていた。教室で見た魔法陣と似ているが違うものだ。
柵の向こう側は雲海なので大多数の生徒が中央に身を寄せる。それでも興味が湧くのは止められないようでキョロキョロと周りを見渡している。鈴はその様子をケラケラと笑いながら柵の上に座った。危ないと思われているようだがこれ以上に危険な目にあっているため気にすることはない。

「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん――〝天道〟」

皆が乗り切ったらイシュタルが何やら唱えだした。その言霊をキーとして台座にある魔法陣が輝き、滑らかな動きで地上に向けて動き出した。
イシュタルが唱えたのはこの魔法陣を起動させるための詠唱らしい。
ある意味初めて見る魔法に興奮し出す生徒達。それを横目に鈴はこんなことを思い、セイバーに窘められていたりする。

(シングルアクションの方が直ぐに起動するのになぁ。詠唱って面倒臭いじゃん。)
(こらこら、そう言いなさんな。出来ないからこれであって出来てたらやってる筈さ。)
(むぅ)

やがて、雲海を抜け地上が見えてきた。眼下には大きな町、否、国が見える。山肌からせり出すように建築された巨大な城と放射状に広がる城下町。
国名はハイリヒ王国と言うそうだ。
台座は、王宮と空中回廊で繋がっている高い塔の屋上に続いているのが魔力の線(・・・・)で分かり、これが雲海を抜け天より降りたる〝神の使徒〟という構図そのままである演出であったため、王国すら狂信者で埋め尽くされているのではないかと鈴は心配をした。
王宮に着いた後、直ぐに玉座に招かれて国が教会の下についていることが発覚したり、王国の重鎮との顔合わせがあったがなんとか乗り越えて、今は宛てがわれた部屋にて鈴は横になっていた。
盗聴器や隠しカメラが無いか隈無く探し、最後に防音の魔術(・・)を使用してからたっぷりと溜め込んだ溜息を吐いた。

「うはぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!何なんだよもう!!!!特異点(・・・)異聞帯(・・・)の次は異世界とかどんだけ運が無さすぎるんだよぉぉぉぉ!!!!そういうのってオカン(エミヤ)兄貴(クー・フーリン)の専売特権でしょぉ!!!!」

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