とあるヒーロー
夜の操車場には、絶叫が響いていた。
「ぐがあぁ!」
俺の左腕は、可動域の真逆の方向へと折れ曲がってしまっている。
しかし、この絶叫は俺だけのものではない。
一方通行は、俺の拳を受けて吹っ飛ばされて、砂利の上に倒れ込んでいた。
「い、痛ェ……、クソッ」
なんとか俺は一方通行の反射を破ってダメージを与えることに成功した。
「いやァ、今のは正直ビビったぜ。まさか俺の反射をパンチで破るとは。この俺をここまで追い詰めたのはお前が初めてなんじゃねェかァ?」
一方通行にダメージを与えることが出来たのは大きな進歩だ。
しかし、有利か不利かと聞かれれば、圧倒的に後者だった。
この一撃で決めるはずが、反射を完全に破りきらず思った以上に威力が下がってしまっていて、逆にこっちの左腕が折れてしまった。
まだまだ全開で戦えるこいつに対してあと足2本で戦わなくちゃならないのはぶっちゃけキツイ。
いや、移動のことを考えるとあと1本か。
さっきのような大きな隙はもう作れないだろう。
「けど、その体じゃァもう戦えねェンじゃねェの?」
「お前なんて足だけで十分だ」
「ッ……!?」
気を紛らわすまてにハッタリをかますが、こんなハンデ背負って勝てる相手じゃない。
「じゃあやってみろよォッ!」
一方通行は、足元の小石を思いっきり蹴りつけた。
能力によって弾丸のように加速した小石は、俺の腹へと突き刺さる。
「ごほっ、」
衝撃は骨まで響き、激痛が俺の両腕を襲った。
一方通行は俺に休ませる暇を与えまいと、一気に距離を詰めてくる。
「遅っせンだよォッ!」
動きは直線的で、避けること自体はそう難しくなかった。
俺は次々と繰り出される一方通行の攻撃を避けていく。
「ぐっ……」
細かいステップで生まれる僅かな振動が折れた骨へと伝わって、その痛みが徐々に集中力を削いでいく。
実際、一方通行は気付いてないかもしれないが、さっきまである程度の距離を取って避けていた腕が、どんどんとその距離を縮めできている。
このままでは腕に触れてしまうのも時間の問題だ。
「辛そうだなァ。早く楽になっちまえよォ!」
攻撃の激しさが一気に増す。
一方通行の両腕が、まるで機関銃のように俺を襲った。
1発1発に対処するのが精一杯で、もう余裕なんて無い。
左方から、俺の顔面目掛けて一方通行の腕が伸びてきた。
ギリギリのタイミング。
俺はそれを右へのステップで回避しようと、右脚へと力を込める。
しかし。
「しまっ……」
風船に空いた穴から空気が抜けていってしまうように、右脚から力が抜けていった。
回避するどころか、俺は膝をついてしまった。
当然と言えば当然か。
空中で自分の体を支えることが出来るほどの空気抵抗を生み出す蹴りを放ったんだ。
本来なら絶対にありえない事だし、むしろよくここまで耐えたものだ。
「ハハァッ!随分しぶとかったが最期は呆気なかったなァッ!」
もう一度体制を立て直すよりも、一方通行の方が速い。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク