その後
目を覚ますと、見覚えのない病室だった。
生きてる……。
「痛ってぇ……」
そういえば今両腕折れてるんだったな。
閉ざされたカーテンからは、うっすらと日の光が漏れている。
壁に掛けられている時計を見ると、時刻は朝の6時だった。
変な時間に起きちまったなー。
徐々に目が覚めてきて、もう寝直せそうにない。
両腕も使えないし、このまま誰かが来るまではぼーっとしてるしかねえのか……。
いや、結構キツいなそれ。
何かないかと病室を見回してみる。
特に何もねえな。
眠りから覚めていくにつれてだんだんと、頭の中に色々な思考が巡り始めた。
そういえば、実験はどうなったんだろうか。
俺がこうして無事に生きているってことは、妹達も無事だと思いたいが。
だが、実験が再開されれば振り出しに戻ってしまう。
御坂さんには何か考えがあるみたいだったが……。
その時、病室の扉がコンコン、と叩かれた。
こんな朝っぱらから誰だ?
わざわざこの俺の見舞いなんて。
誰かは知らんが、別にどうでもいいか。
どうせこのままだったら暇だし。
「入っていいですよー」
俺の返事を聞くと、ゆっくりと扉は開かれた。
「調子はどうなの?」
「なんだお前か」
「なんだとは何よ!」
「いや、別にガッカリしたとかそういうこと言ってんじゃねえよ」
俺の見舞いにやって来たのは、実験を止めるために協力した2人のクローンの内の、短気な方だ。
でも不便だなぁ。
毎回呼ぶ時に短気の方だのビビりの方だの言
うのはめんどくさいし。
「そういえばさー、お前って名前とかないの?」
「今更過ぎない!?」
「まあ確かに知り合ったのはちょっと前だけどさー。不便じゃね?」
「確かにそうね」
「だろ?」
「はぁ。凛、これが私の名前よ。ちなみにもう一人の方は鈴ね」
「凛と鈴か」
外国風の名前をイメージしていたものだから、思ったより和風系の名前が出てきて驚いた。
「でもよぉ、見舞いに来てくれるのは嬉しいんだけどさ。何もこんな早くに来なくても良かったんだぜ?」
「あまりあの子たちには会いたくないのよ。それにお姉様とも」
あの子たちとは、妹達のことか。
でも、御坂さんのことだって慕ってる様子だったしなんでわざわざ避けてんだ?
「まぁ、別に無理に聞いたりしねえけどよ」
「そうしてくれると助かるわ」
「でも鈴はなんで来てないんだ?」
まさか嫌われてるとかないよな?
「あの子は今バイトよ」
「え?バイトとかしてんの?あの性格で出来んのか?」
「当たり前でしょ?じゃなきゃどうやって生きてくって言うのよ」
支給金は貰えてないのか。
鈴の方は知らねえけど、こいつの能力はレベル4に相当する。
バイトなんかしなくても、結構な金が貰えると思うんだけどなぁ。
ますますこいつらの立場が分かんなくなってきたな。
他の奴らと比べて異常に感情豊かだし。
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