其ノ壱
河内郡温県孝敬里。そこは都・洛陽から少し離れた所だ
都から少し離れたといっても別に豊かであるとかそういうわけじゃない
その街に俺は家族と幼なじみと住んでいる
そしてそこから少し離れた森の中のとある一部に草が寝っ転がっても問題ないくらい茂っている
そこに寝るのが俺の憩いの時間だ
俺は司馬子上、真名は総雅。歳はまだ両の手で数えられるほどだ
この国には姓、名、字の他に真名と許したものしか呼んではいけない名前がある
俺で例えると姓は司馬、名は昭、字は子上で真名が総雅となる
「はー……なんかいろいろとめんどくせぇ」
さっきまで母上の元で学問を学び、それが終わったら父上の元で剣術の鍛錬だ
正直、そんなことやったってなんにも意味がないと思う
何故かと言うと、俺にはなんでもできる完璧な姉上がいる
姉上は天才で、一度聞けばそれは覚えられ、一度見ればそれができる
例え学問だろうが剣術だろうが果ては料理から音楽といったことまでな
完璧な姉持っているが故に何事もやる気が起きずめんどくさがりになってしまった
ここで寝てても別に誰も困ることはないし、寝てしまうか──
「総雅くん」
「……優奈か」
この子は王元姫。真名は優奈
俺の幼なじみで一緒に暮らしている
なんで一緒に暮らしているかというと、彼女の両親は都で働いていてな
それで一人でいさせるよりってことでうちで暮らすことになった
「そろそろ時間だよ?」
「わかってる。けどめんどくせぇ」
「そんなこと言って。鍛錬はやらないと」
「別に俺が強くならなくったって姉上がいるだろ」
「めんどくさがってやらなかったって報告するよ?」
「……まさか母上にもか?」
「もちろん。苺歌さんには報告しなきゃ」
「わーった。行くから言うのはなしだ」
母上に怒られるなんてそれ以上に怖いものなんてないと思う
姉上は怒るっていっても優しく怒るし、父上は強制しないからと見逃してくれると思う
けど母上だけはダメだ。まさに蛇に睨まれた蛙になる
または獲物を狙う狼に睨まれてるって例えだな
優奈と森から戻り、屋敷の稽古場に行く
うちはそれなりに大きい屋敷に住んでいる
俺たち司馬一族は元々は都で暮らしてて母上が都で帝の側仕えとして、学問を教えてたりもしてた
俺もその時に霊帝とその妹と友だちになったんだ
それで母上が仕事を引退して、こっちに来たわけ
「いいのかい?別に毎日じゃなくても僕は構わないんだけど」
「いえ、やります」
俺の父上、張春華。真名は白兜
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