ハーメルン
スペリオンズ~異なる地平に降り立つ巨人
スペリオン、とぶ

 とある山、木々の葉は青々と茂り、風は涼しい空気を運んでくる。

 『ドワァアアアアアアア!!』

 そんなところへ巨体の影が降ってくる。

 『いってぇちくしょうめ・・・。』
 (空を飛ぶ相手はやはり辛いな。)

 スペリオンである。

 敵対しているのは、雲海怪鳥『イリューガル』である。繁殖期を迎えると南方はサウリアからやってくる、極彩色の羽に彩られる渡り鳥の一種であるが、今襲い掛かってきている個体はまさしく鳶色の、地味なカラーリングだ。そしてまた通常の個体に比べてでっかいのである。

 何故無駄にデカいのか?突然変異である。
 
 そして体が大きくなった分、食欲も旺盛になってしまった。今日のご飯は、それはそれは大きな亀と、その背中の人間たちの予定だ。

 『チュンチュン!』

 「うぉおおお食われてたまるかぁ!」
 「あっちいけぇ!」

 巣では今年の春に孵ったばかりのヒナたちが、腹を空かせて待っている。これも巨大で、人間の背丈ほどもある。それらの猛攻を、ドロシーたちは必死にしのいでいるところである。レオナルドは手足を引っ込めて防御している。

 『グワー!』
 (ええい、鬱陶しいやつめ。お前も空を飛んで対抗しろ!)
 『飛ぼうと思って飛べたら苦労しない!』

 強襲してくる爪を躱して、逆に飛び掛かってみせるが、イリューガルには難なく逃げられてしまう。相手は1km先の獲物をも瞬時に見分けられる動体視力と、的確に獲物を追い詰める俊敏さを兼ね揃え保持したまま、巨大な姿へと変貌しているのだ。鳥に空を飛ばれてしまっては、さしものスペリオンにも分が悪い。

 『対空対空・・・熱烈クラム!』

 スペリオンが手を振ると、小さな戦輪が飛び出してイリューガルを狙う。が、その程度のカトンボに捉えられるものでなく、チャクラムは空を切った。

 『地上に降りてくるタイミングを狙うしかないか・・・。』
 (アイツのスタミナと、こっちの体力どっちが先に尽きるか。)

 そしてイリューガルは本来渡り鳥である。何千キロという距離を飛び続ける猛禽を相手に、地上しか動けないヒーローが勝てる道理はない。

 (退くしかないだろう。)
 『アイツを見捨てるのかよ!』
 (そんなわけないだろう。だが、今俺たちが倒れたら、一体誰がヤツを倒すんだ?)

 それが理解できないほどアキラも幼稚ではない。

 『こうなりゃ・・・タッチダウンだ!』
 (あっ、バカッ!)

 アキラの口が判断を仰ぐよりも早く、体はイリューガルの巣のある山頂へ向かって走り出した。

 『キシャアアアア!!』

 突然の行動に驚いたのはイリュ-ガルもそうだ。すぐにその意図を理解し、巣を守るために急いで急降下する。

 『追ってきたな、それでいい!熱烈クラム!!』

 体を反転させて地面を背中で滑りながら、再びチャクラムを投げる。

 『ギャアアアアアア!!』

 起死回生の一手は、突撃態勢に入っていたイリューガルの片翼を焼き切った。しかしイリューガルは止まらない。そのまま墜落する勢いで、スペリオンの胸に爪を突き立てた。

 『ぐぅうううう・・・なんつー馬力だ・・・振りほどけねえ!』

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/12

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析