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カナエが眠ったのを確認し、義勇としのぶと共に病室を離れて、客間へと移動する。
先程、確認して気づいたことだが、カナエは恐らく皆がいる前では明るく振る舞い、一人になると泣いているみたいだったので、涙を流して発散した方がいい、少しでも一人の時間も必要だ、と伝えると、しのぶは少し不服そうだったが、最終的には了承してくれた。
姉思いのしのぶだから、カナエが無理をしていることはわかっていたのだろう。
少しでも姉のためになるのならと後ろ髪をひかれる思いで、私の後をついてきた。
しかし、こうして離れたのは、これから伝えることをカナエが知らない方がいいと思ったからである。
「私に特別な任務、ですか?」
「ああ、御館様からの願いでもある」
内容は、しのぶにカナエの後を継ぐように柱になってもらいたいこと。
そして、しのぶが柱に成るための絶対条件である鬼殺しの毒を完成させることである。
柱として小柄だったカナエよりも、体が小さく腕力もないしのぶでは、屈強な鬼の首を刎ねるのは難しい。
厳密にいうと、鍛えれば首を落とすことも出来るようになるかもしれないが、落とせたとしても、それは取るに足らない雑魚鬼程度、強い鬼や十二鬼月などを倒すことができない。
そこで、必要になるのが、しのぶが藤の花から成分を抽出し、作り出した特別な毒。
そして最もその毒を使うに適した日輪刀と特化した呼吸法の修得。
これが御館様から与えられた課題であった。
自分の戦闘スタイルについては、しのぶ自身も既に考えており、日輪刀も既に試作品を発注しているとのこと。
試作品が届いてから、振りやすさや突きやすさなどを試してみるみたいなので、最終的には『蟲の呼吸』に行き着くことだろう。
となれば、肝になる毒なのだが、すでに実験を繰り返し鬼に対しても使ったことは既にあるらしい。
ただ、カナエが半殺しにしていた鬼に試したことが大半だったので、絶対に殺すことができるかは不明。
あと、元気なものは毒を投与しても、中々死ぬことはなく、最高十分も生きていた鬼がいたらしい。
ある程度の即効性がないと、鬼殺する上では使い物にはならない。
「となれば、だ。 やはり、試していくしかないようだね」
鬼を斬っては鬼を斬る。
つまり実地を踏まえながら、毒の配分を調整していく。
上手くいけば、目標の五十の鬼を斬るという条件もクリアすることができる。
つまりは一石二鳥ということである。
しかし、しのぶの表情は強張ったままで、口を閉じたままだった。
微かに震えるしのぶを見て、私はようやくその事実に気が付いた。
「しのぶ、鬼と対峙するのが怖いのかい?」
私の言葉に、しのぶは頷くことはしなかったが、首を横に振ることもしなかった。
ただ、微かに震える右手を震える左手で押さえるだけ。
そこで、私はまだしのぶが十五の少女だということに気が付いてしまった。
勿論、十五で鬼殺隊というのはそう珍しいものではない。
実際、目の前のしのぶは十八の若さで柱の地位に辿り着いている。
しかし、反面、鬼と対峙した恐怖を忘れられず、鬼殺隊を引退したり、隠になったりする人も数多くいる。
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