第十七話
信澄と長政を加えた一行は、竹中半兵衛の暮らしている森の中を歩いていた。
「む、あれは…」
森を進んでいると、昨日出会った少女が子猫を両腕で抱えているのが見えてくる。
「やあ、こんにちは」
「あ、お兄さん。皆さんもこんにちは」
翔翼が声をかけると、彼らに気づいた少女がぺこりと頭を下げる。
「そちらのお二人は?」
「友人だよさっき会ってね、せっかくだから一緒に行こうってことになったんだ」
「そうなんですか、お友達さんがいっぱいなんですね。羨ましいです…」
翔翼のことを羨望目で見ている少女、に翔翼はあることに気づく。
「昨日君が言っていた友達とはその子のことかな?」
少女の抱えている子猫には包帯が巻かれており、昨日共に採った薬草が必要な相手であることを推察する翔翼。
「はい、鴉さんにいじめられていたんです。可愛そうです、くすんくすん」
その時のことを思い出したのか、涙ぐむ少女の頭を撫でる翔翼。
「自然の摂理だからな、仕方ないこともあるさ」
「それは、そうですけど…。でも、可愛そうです、くすんくすん」
「優しんだな君は」
慈愛の目を向けながらしゃがんで目線を合わせると、よしよしと少女の頭を撫でる翔翼。
「…何やら性格が変わっていないだろうか彼?」
「生粋の露璃魂だからね翔兄は!」
翔翼の変化に長政が唖然とするも、信澄の説明にああ、と納得する。
そんな折、何かが駆けてくる音が聞こえてくる。
「その子から離れろォ!!」
「ッ!?」
翔翼と同年代の男が振り下ろしてきた刀を、翔翼は横に跳んで避ける。
「兄上!?」
「下がっていろ!!」
男は少女を背に庇うように立つと、翔翼らを威嚇する。どうやら少女の兄らしい。
「大空氏、もしやあの男竹中半兵衛では?」
「どうやらそのようだな」
男の外見噂に聞いている半兵衛と一致していた。彼が暮らしているとされる場所から近いこともあり、彼が竹中半兵衛なのであろう。
「待たれよ半兵衛殿。私は織田家家臣大空翔翼、そなたと争う気は…」
「!織田の手の者か!この子に害をなしに来たか!!」
「いや、話を…!」
「問答無用ッ!」
話し合いに持ち込もうとするも、明らかな敵意を向けてくる半兵衛は聞く耳を持たず翔翼に斬りかかって来た。
やむなく翔翼は刀を抜き防御すると、押し合う形になる。
「落ち着かれよ!露璃魂道に誓って、彼女に害を加えることなどせん!!」
「露璃魂だと!?尚更信用できるかこの変質者め!!」
半兵衛の言葉に、カチンときた翔翼。
「誰が変質者だゴラァ!!露璃魂は幼子の成長を温かく見守る礼儀正しい存在じゃボケェェェエエエ!!!」
気迫と共に押し出すと蹴りを放る翔翼、男はそれを腕で防ぐと勢いを利用して一旦距離を取る。
そんな彼に翔翼は素早く距離を詰めると、本気で斬りかかった。
「しょ、翔翼殿!?本気は不味いですよ!?」
「いかん!寛容の塊である大空氏だが、露璃魂のことを侮辱されりゅちょほんにゅへひれりゅてこちゃる!!」
「最後が噛み過ぎて分からんのだが!?」
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