ハーメルン
回帰の刃
共同作戦

「は?」

 こういう命令が下ったと、説明した瞬間の声がソレだった。言いたくなる気持ちもわかる。俺も言いたい。

「そういう訳だから、これからよろしくお願いします……?」
「──そうはならないでしょっ!」

 しのぶが怒号を発する。言いたいことは分かる。分かる。凄く良く分かる。お館様何考えてるんだとか、この組織何考えてるんだとか。

「……貴方が姉さんに近付きたくて書いたってこともあり得るのよ」

 敬語が外れ、睨んでくるしのぶ。
 俺に言うなよ。それに、これを持ってたのは俺じゃ無い。カナエだ。

「だけど、貴方が書いて鴉に渡したって可能性だってあり得るでしょう?」
「まぁまぁしのぶ、それは無いから安心して」
「なんで逆に姉さんはそんなに落ち着いてるのよ!」
「え〜、だって不磨さん柱よ? 柱の人間がそんなことすると思う?」
「うぐっ……そ、それはたしかに」

 実際その通りだと納得したのか、少し声の音量を下げる。
 どちらにせよ、俺たちは鎹鴉が居ないと鬼の場所に辿り着けない。ならあまり変わらないだろ。……俺としても申し訳ないとは思ってるがな。

 姉妹で鬼殺隊に入るような仲だ。そこに男が急に入ってきて、信用できる相手でもない。不愉快な気持ちを抱くのは当然だろう。

「──はい! 取り敢えず今日はここくらいにして、休みましょう?」
「…………そうね。姉さんの言う通り、今日は休ませていただきます」

 我先にと、一度礼をしてから部屋から出て行くしのぶ。
 そんなしのぶをみて何か考える仕草をした後、カナエも俺に一礼してから出て行った。

 ……お館様。一体、何を考えておられるのですか。

 体調管理のできない者に、柱は務まらない。そう言う事なのでしょうか。言い分はわかるし、理解も納得もできる。鬼殺隊の柱が、そんな情けない事で止まっていい事にはならない。
 だが、どうして。どうしてわざわざ、あの二人なのでしょうか。

 カァ、と鴉が鳴く。
 お前はどう思う? 

「カァ」

 普段喋るんだからこう言う時くらい話せよな。




 朝。
 屋敷の者に出された料理を平らげ、支度を済ませ屋敷の前で待機する。刀を隠さねばならないのが面倒くさいが、もう慣れたことだ。

「お待たせしました」
「…………」

 カナエとしのぶが同時に出てくる。
 二人とも身なりを整えたようで、昨日と変わらぬ装いで佇んでいる。
 なら行こうか。鴉、場所は? 

『西ィ! 西の山ァ!』
「わ、随分と元気ですね」

 喧しく叫ぶ俺の鎹鴉に対して、カナエが笑う。
 そうか? こんなものだと思っていたが。

「…………さぁ。飼い主に似たんじゃないですか?」

 しのぶがチクリと毒を刺してくる。
 俺に対してかなり辛辣だな──どうでもいいが。良くも悪くも、俺にとって何の関係もない。しのぶを注意するカナエに、どうでもいいから放っておけと答える。

 好きに言えばいい。だが、俺たち三人以外がいる場合は言うなよ。
 今はお前の感情も理解できるから好きに言わせてやる。だが、他の隊士がいる場合は別だ。柱として、階級を無視するわけにはいかない。何のための階級だと思ってる? 

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