17 転落する皇国
「あなた方は、何か重大な勘違いをしている。
我々ムーは、日本に兵器を輸出などしていない。
彼らは我々よりも機械文明が進んでいるのです。」
パーパルディア皇国外交陣によって呼び出されたムー国大使ムーゲとレミールを始めとする皇国外交陣との会話の最中である。
「文明圏外の蛮国が、第2文明圏の列強よりも、機械文明が進んでいる?そんな話が信じられるか!!」
「彼らは……転移国家という情報は、掴んでおられないのですか?」
レミールは過去に読んだ報告書の片隅に記載されていた文を思い出す。
しかし、彼女は現実主義者であり、そんな物語を本気になど出来なかった。
「転移国家などと……貴国はそれを信じているのか?」
「信じます。我が国以外の国では、神話としか思われていないが、我が国もまた転移国家なのです。
1万2千年前、当時王政だったが、歴史書にはっきりと記録されています。
日本について調査した結果、我が国の元いた世界から転移した国家であり、1万2千年前の異世界での友好国です。
当時の友好国ヤムートは、ヤマトやヤマタイコク等、様々に名を変え、日本となりて現在に至ります。」
ムーゲはカバンの中から写真を数枚取り出す。
「これは、日本の戦闘機の写真です。
そしてこれが我が国の戦闘機の写真……。
見て下さい、我が国の戦闘機にはプロペラ、風を送り出す機械ですが、それが付いていますが、日本の戦闘機にはプロペラが無い。
速度も日本の戦闘機は音の速さを超える事が出来るようです。
次に、我が国の戦闘機には、ここ、人が乗る部分があり、外を見れるようになっている。しかし、日本の戦闘機にはそれも無い。
これは、単に視界が悪いだとか、カメラを使って見ているというようなものではなく、そもそも人が乗っていないのです。コンピュータという、発展した計算機の塊のようなもので制御されているようですが……
全く、どうなっているのか見当もつかない。
我が国にこれを作る技術はありません。
輸入もしたいのですがまだ検討中のようです。
我が国が日本に輸出出来る兵器は無いはずで、逆に我が国がほしい立場なのです。」
次に、超高層建築物が立ち並ぶ、見た事が無いほどの栄えた街の写真を取り出す。
「これは、日本の首都、東京の写真です。
日本は転移前、地震の多い国だった。
これほどの高層建築物の全てが、強い地震が来てもビクともしません。」
パーパルディア皇国側の面々の顔色が一気に悪くなっていくのが解る。
ムーゲはさらに話を続ける。
「軍にしても、技術にしても、日本国は我々よりも遥かに強いし、先を進んでいるのです。
神聖ミリシアル帝国よりも上と言っても過言ではありません。
そんな国にあなた方は宣戦を布告し、かつ殲滅戦を宣言してしまいました。
殲滅戦を宣言しているということは、相手から殲滅される可能性も当然あります。
ムー政府は国民を守る義務があり、このままでは皇都エストシラントが灰燼に帰する可能性もあると判断し、ムー国政府はムーの民に、パーパルディア皇国からの国外退去命令を出したのです。
我々も間もなく引き上げます。
戦いの後、皇国がまだ残っていたら私はまた帰ってくるでしょう。
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