2 動乱
クワ・トイネ公国、そしてクイラ王国が日本エリアと国交を締結してから、2ヶ月が経とうとしていた。
この2ヶ月間は、クワ・トイネ公国にとって、歴史上で最も変化した2ヶ月間であった。
2ヶ月前、日本エリアは、クワ・トイネ公国と、クイラ王国両方に同時に接触し、双方と国交を結んだ。
日本エリアからの食料の買い付け量はとてつもない規模であったが、大地の神の祝福を受けた土地を持ち、家畜にさえ旨い食料を与えることが出来る農耕国たるクワ・トイネ公国は日本エリアからの受注に応える事が出来た。
クイラ王国についても、元々作物が育たない不毛の土地であったが、日本エリアにとっては資源の宝庫であるらしくクイラ王国は大量の資源を日本エリアに輸出していた。
一方日本エリアはこれらと引き換えにインフラを輸出してきた。
大都市間を結ぶ、石畳の進化したような継ぎ目の無い道路、そして鉄道と呼ばれる大規模輸送システムを構築しようとしていた。これが完成すれば各地の流通が活発化し、いままでとは比較にならない発展を遂げるだろうとの試算が経済部から上がってきている。
各種技術や武器の提供も求めたが、検討中とのことですぐには手に入らなかった。
彼らからもたらされた便利なものは、今までの常識を全く塗り替えてしまうほどのものであった。
真水ではとても飲めるものではなかった今までのものと違い、いつでも清潔な水が飲めるようになる水道技術、夜でも昼のように明るく出来る照明、ボタン一つで発熱し、火と同じように調理ができるクッキングヒーター。これだけでも生活はとてつもなく楽になる。
まだ、2ヶ月しか経っていないために普及はしていないが、それらのサンプルを見た経済部の担当者は驚愕で放心状態になったという。
国がとてつもなく豊かになると……。
「すごいものだな、日本は……。明らかに三大文明圏を超えている。もしかしたら、我が国も生活水準において、三大文明圏を超えるやもしれぬぞ」
クワ・トイネ公国首相カナタは、秘書に語りかける。
まだ見ぬ国の劇的発展を、彼は見据えていた。
日本エリアの呼称については、日本で構わないということになった。日本エリアは日本には違いないし、
国際連邦などという奇妙な名称からもわかる通り、地球の現状というのは異なる常識を持った相手にはっきり説明できるようなものではなかったのだ。
世界各国の実質的な統合は緩やかに進んだもので、明確な制度として定められたものではない曖昧なものだった。
国際連邦というのも元々は、連邦制が最も近いとして国際連合の名から生まれた通称であり、それがそのまま使われているのだ。
「いや、それだけではない。国としても三大文明圏を超えられるだろう。」
日本から流入してきている技術。
現段階でも夢のようなものばかりだが、彼らはさらにとてつもないものを多く持っているという。
しかも、いずれそれらも輸出しようというのだ。未来への展望は広がるばかりだ。
「彼らが平和主義で助かりました。彼らが覇権国家だったらと考えるとぞっとします。」
落ちる夕日が穀倉地帯を照らし、一面金色の美しい風景が広がる。
この世界でも太陽は東から西へと沈む。日の沈む方には、ロウリア王国があった。
「……しかし、武器をすぐに輸出してくれなかったのはいささか残念だ。ロウリア王国はいつまで待ってくれるだろうか……」
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