ハーメルン
東方逢魔幻譚 ~ Never Cross Phantasm.
第6話 復活
博麗神社
03:15 a.m.
夜も更け、早朝の涼しい空気に包まれ始めた博麗神社の境内。
牙を剥く異形の怪物は二体。対するは片や左肩を負傷した若き巫女、片や不完全なままの白いクウガである。
背中合わせに構えられたお札と拳は二つの異形に相対し、ぼんやりと夜空を照らす月明かりの下で息を合わせていた。
クモ種怪人、ズ・グムン・バは境内の石畳に手を合わせ、地を這うようにこちらを威嚇する。昨日は伸ばしていた短刀の如き両爪は、今は手首までほどの小ささに収まっている。初めてこの怪物と出会ったときと同じ、おそらくは平時状態の拳だ。
そしてもう一方の怪物、コウモリ種怪人、ズ・ゴオマ・グはその両手に生える翼膜を羽ばたかせ、月夜に舞って牙を光らせる。コウモリらしく獲物に喰らいつくために発達した牙、そこに滴る唾液には生物の血液凝固を遅らせる能力があるのかもしれない。
霊夢が受けた傷は翼爪によるものだったが、そこに唾液の成分が付着していたのだろうか。
手を出すな 俺がやる
「デゾ ザグバ ゴセ グジャス」
後から来ておいて 偉そうに……!
「ガドバサ ビデ ゴギデ ゲサゴグビ……!」
霊夢を差し置き、クウガである五代を殺そうとその場に着地したズ・ゴオマ・グ。だが、血気に逸るその行動は蜘蛛の能力を備えたズ・グムン・バによって遮られる。
霊夢たちには彼らが発しているグロンギ語の意味は理解できなかったが、どこか不和の様子が感じられた。
その隙を見て、霊夢と五代は互いの顔を見合わせて頷く。霊夢は一度五代から離れ、ズ・グムン・バに不満の声を上げるズ・ゴオマ・グへと近づいた。
こちらの身体はまだ動く。多少の傷こそ負ってしまったものの、相手の動きは把握した。五代がこの場に現れたのは予想外だったが、戦力はこれで2対2。まったく互角に戦えるとは言い難いだろうが、一人で二体を相手にするよりかは
幾許
(
いくばく
)
かマシな戦いが期待できるはずだ。
「隙だらけよ!!」
霊夢は軽やかに接近し、ズ・ゴオマ・グの背中に渾身の
掌打
(
しょうだ
)
、【
衝霊気
(
しょうれいき
)
】を叩きつける。霊力によって強化されているため、単純な体術でありながらその威力は本気の通常ショットにも比肩するほどだ。
両手の平で霊力が爆発する衝撃。骨まで響くそれを実感し、ズ・ゴオマ・グを突き飛ばしたことを確認する間もなく、霊夢は手元に儀礼用の大幣を取り出した。
迫り来るズ・グムン・バの豪腕をその大幣で防ぐと、またしても両腕に強い衝撃が響く。
「はぁっ!」
ギリギリと大幣に力を加えるズ・グムン・バに対し、五代が突進しながらの拳をぶつける。霊力など微塵も存在しない純粋な力押しの衝撃ではズ・グムン・バを吹き飛ばすことはできなかったが、よろけさせることぐらいはできた。
その隙を見て、五代は振りかざした左の拳をもってさらなる打撃を加える。白いクウガの微弱な力といえど、繰り返し殴打を加えていけばそれなりのダメージにはなるはずだ。
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