アキラの身元
「それはさておき、アキラ」
「はい」
「君のこと、説明してくれるかい?」
「わかりました。まず、初めに、この紙を見てください」
そう言って机の上に一枚のA4サイズの紙を広げた。
「この結果はっ!?」
「えっ!? うそっ!?」
「僕はアキラエル・S・ブリタニア。父ライゼル・S・ブリタニアと、母カレン・シュタットフェルトの実の息子。日本名を四十万アキラ。僕のいた世界線では父は四十万ライ、母は四十万カレンとなっています」
「わ、私たちの・・・」
「息子・・・」
「はい、僕はCの世界を使い、時を遡り、二人に会いにきました」
「ちょっと待て、時を遡った? どうゆうことだ?」
「そのままの意味です。つまるところ、母上はまだ妊娠されていませんし、父上との行為にも及んでいないはずなのです。僕の記憶が正しければ、僕が5歳の時に、両親は27でした。なのでそこから妊娠期間等々を計算すると26~27の間なので。今のお二人は18なので」
「ちょっと、なんであんたがそんなこと知ってんのよっ!」
「母上が教えてくれました。といっても、僕が母上に僕自身のことについて聞いていた時にですが」
「じゃあ、その紙の整合性を確かめるために、血液検査をさせてもらえるかしら?」
「かまいませんよ、では日程はおいおい、ですか?」
「そうね、その時になったら連絡を入れるわ」
「まぁ、しかし、確かに似てはいるな」
「そうね、この銀色の髪の毛とか、ライのにそっくり」
「目元もや目の色なんかはカレンそっくりだ」
「そうでしょう?」
ちょっと誇らしそうな顔を見せるアキラ。ふと、千冬は気になって尋ねた。
「でも何でわざわざ時を遡ってまで二人を追いかけたんだ?」
「それは・・・」
苦痛と苦悩に顔がゆがむ。表情として現れるほどの理由を、アキラは持っている。
「す、すまない。無神経だったか?」
「いえ、話さなければとは思っていました。ただ、話さずにいられればなとも、思っていましたけど」
そう言って、過去について語り始める。
「僕は先ほども申し上げました通り、父ライと母カレンの間に生まれた長男です。そして・・・」
さらに妹もおり、四人で別荘に暮らしていた。使用人との仲もよく、血は繋がっていないのに家族のように気にかけてくれる。とても幸せな環境の中で育った。アキラ自身も、そんな生活を心から喜んでいた。そう話した。
「父は日本のある県を治める知事として、働いていました。けど、その件は前に赴任していた知事が圧政を敷いていたようで、あまり評判がよくなかったんです」
それでも、ライの努力と政策により、だんだんと評判も上がり、信頼も集まり始めた。
「正直、県民全員が僕ら家族といえるまでに、回復しました。完全にお互いを信頼し、それも合わさり政策共に、どんどん、県民に寄り添うようになっていました」
けど・・・と言葉を濁す。少し逡巡するような仕草をとった後、
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