その1
「それ言っちゃったらみんな一緒じゃないですかー!」
「そうね。だからこそ、私は一色さんをその気にさせる方向で行くことにしたのだけれど」
「この悪魔!」
「何だ一色、今更気付いたのか」
はん、と鼻で笑いながらそう述べた八幡をギロリと睨み付けると、とにかく自分は会長なんかやりたくないと声高に宣言した。先程も言っていたが、改めて力強く言い切った。
「……なら、一色さん。ここは一つ、勝負をしましょう」
「勝負?」
「ええ。あなたは会長をやりたくない、私はあなたをその気にさせたい。どちらの意思が勝つかの、勝負」
クスリ、と雪乃は笑う。当然奉仕部は敵に回ると続け、優美子や姫菜、そして結衣を見やった。四対一だが、卑怯と言うまいなと微笑んだ。
「奉仕部相手……それはつまり、こっちは先輩を味方に引き入れていいってことですね」
「嫌だ、巻き込むな、俺は無関係だ」
「いいの? 由比ヶ浜さん」
「ヒッキーがいいなら、いいんじゃない?」
「嫌だ」
「やっぱり由比ヶ浜さんと一緒がいいのね」
「そういう意味じゃない、そもそも巻き込むな」
八幡の言葉を無視しながら、いろはは拳を握り込む。分かりました、と雪乃を見ながら、頷く。その代わり、と握っていた拳を緩め、指を一本立てた。一週間の期限と、こちらが勝ったら会長にならないための協力を全力でしてもらうという約束を立てた。
「ええ、それで構わないわ。元々そのつもりだったし」
「言いましたね。その言葉、忘れないでくださいよ」
笑みを浮かべる雪乃に対し、いろはも同じように笑みを浮かべる。双方ともに、自分が負けるとは思っていない。どちらも、勝利し、そして思い通りになることを思い描いている。
「楽しみね、一色さん」
「絶対、雪ノ下先輩達なんかには負けたりしませんから!」
「即堕ち2コマみたいなこと言い出したな」
「先輩、セクハラで訴えますよ」
こうして比企谷八幡は一色いろは陣営となった。
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