ハーメルン
時を操る狐面の少女が鬼殺隊で柱を超えたそうですよ
潜むモノ




雫は上弦の肆との戦闘の中、思考を巡らせる。

(はらわたが煮えくり返っている。目の前の鬼にも、磯島さんにも、……自分にも)

煉獄さんとの会話をした時くらいから徐々に赤くなっていく視界の中、自分をその感情に持っていかれそうになるのを堪える。

(だめだ、集中しろ。時止めの力が働いた所でこの鬼の血鬼術は広いし解ければ追ってくる。体力の無駄だ)

耳に届く音はまるで水の中にいるかのようにこもってよく聞こえない。避けた筈の血鬼術の声にやられたからだ。

(何でだろう、体が軽いな。こんな気分になったのはいつぶりだろう)

視界が赤くなった世界、内側に火が灯ったかのように熱い体、恐ろしく軽い体。

(……不思議だ。今ならどんな攻撃も簡単に躱せそうだ)

目の前にまるで波のような広範囲の攻撃が押し寄せてくる。

《全集中水の呼吸 参ノ型 流流舞い》

押し寄せてくる大木の龍を一つ残らず全て斬っていく。

(鈍い)

全て斬り終えると、最初の怒りに染まっていた鬼の顔が恐怖に歪んでいるのが見える。

「……鬼のくせに何に怯えてるんですか?」

《全集中水の呼吸 漆ノ型 雫波紋突き・撃》

「ガハッ!!」

防御しようとする鬼を頸も刎ねながら身体中穴だらけにして吹き飛ばす

(どうせ死なないでしょう?化け物さん)

再生しかけている鬼に《瞬き》を発動させて接近すると心臓から地面へと突き刺す。

「ぐぬぅぅ!!小娘ェエエ!!」

相当深く刺した日輪刀を抜こうとする鬼を柄の頭を足で踏みつけて押さえ込む。

「……あなたは、一体何人殺したんですか?何人食べて、そこまで強くなったんですか?」

無駄な質問だとわかっているのに口が動く。まるでそれが本当の自分のように勝手に口が動いた。

「黙れ小娘!」

その瞬間、自身後ろに気配を感じて刀を抜きながら上へ飛ぶ。

《血鬼術 共鳴雷殺》

先ほどまでいた鬼の上を通るように放たれたその攻撃はその先にあった森の一部を消しとばす。

(あと、どれくらいだろう。煉獄さん。)

更に視界が赤く染まる。もう周りの色は識別できない中、本体を探しているであろう煉獄のことを考える。

(はやく煉獄さん。じゃないと私が私で無くなってしまう気がする)

そこでふと、ある記憶が頭をよぎる。

(この感覚、あの時の。病院で鬼を殺した時と同じ?)

あの時は時止めの力を自覚すらしていなかった。
だが気がつけば鬼を中庭で傷だらけにしていたことを思い出すと、その時と今での共通点に気づく。

(……もしかして、この力は、怒りが強いほどに強力になっていくのか?)

体はすでに怒り狂って熱くなっている感覚がある。
それに《瞬き》の使用回数が三十を超えた所で数えることをやめたが、もう六十は超えているはずだ。
自分が使える制限は一日で二十回程。もうすでに限界は超えているはずなのに体が軽いという事実がある。

(反動がいつ来るかわからないけど、今なら)

「いつまでも避けれると思うな!!」

《血鬼術 無間業樹》

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