ハーメルン
時を操る狐面の少女が鬼殺隊で柱を超えたそうですよ
初戦闘

 
もう頸は切っているのでもう勝負はついている。そう思って2秒過ぎても頸が落ちなかった。

(あ、あれ?なんで落ちないの?)

焦ってきていると手が攻撃しようと動き始めているのを見て体が強張る。

(うそ、確かに頸は斬ったはず)

そう思った瞬間、頸がゆっくりと地面に落ちて消えていった。
それをみて心の中で冒頭の安堵の声を呟くと同時に、鱗滝さんの殺された兄弟子達が成仏できますようにと心から願うのだった。


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手の異形の鬼が初めて遭遇した鬼だったのでこんなに強い鬼を相手に7日間とか、死ぬ!と心の中で叫びながら今まで以上に本気で行くことにした。しかし最初の鬼以外は全部恐ろしく弱く、数体同時に襲いかかってきても問題なく頸を斬る事ができるほど余裕ができた。

それから7日間、叫び声が聞こえてはそこへ向かい出来るだけ助けることに専念し、開始場所へと帰りついた時、生き残ったのは自分を含めて11名だった。

「…5人も……死んでしまった…」

そう悔やんでいると、自分を見た子があっと声を発した瞬間、生き残った受験者達が一気にここへ集まってきた。

(え?な、なに?私何かまずいことした?)

そう心で焦っていると1人の子がゆっくりと話し始める。

「ありがとう。あの時、異形の鬼に喰われる瞬間、君が来てくれなかったら僕は死んでいた。本当に、心から感謝したい」

え?と思いその子を見ると、あの時喰われかけていた子だった。すると次から次へと周りの子達がありがとう、ありがとうと感謝の言葉を言ってきた。

(……ああ、私がやって来たことは、無駄ではなかったんだ……)


口では他愛もない事を言いつつも、一筋だけ涙が流れていたのは、お面のおかげで誰にも気付かれずに済んだのだった。



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雫を最終選別に送り出して8日が過ぎ、そろそろ帰って来て良い頃だった。

(…まだか……)

柄にもなく不安に焦っている自分を落ち着かせようと体を動かす。
なんなら送り出した次の日から薪を半年は困らないほど割り、畑の手入れをいつもの2割増しほど丁寧にし、片付いている物の少ない部屋を毎日隅々まで掃除し片付け、いつも以上に綺麗になった家の周りをそわそわと歩き回っていた。

ふとジャリッと足音のようなものが聞こえ、振り返る。

そこには少しだけ土に汚れた服以外、送り出したまんまの姿で立っている雫がいた。

「…ただいま、鱗滝さん」

お面を外し、恐ろしく整った顔で微笑みながら、いつも通りの口調で話す雫にゆっくりと近づく。
怪我もなく、確かな足取りで立っている雫を目の前に見て不安が一瞬で飛散し、気がつけばゆっくりと抱き締めていた。

「…よく、戻って来てくれた……!」

柄にもなく涙が溢れるのを感じながら、腕の中にいる子の温かさを感じながら、そう言葉を絞り出した。

「うん、ただいま。鱗滝さん」


それから気恥ずかしくなって動き出すまでには少しだけ時間がかかったそうだ。

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