報告
「……は?」
意味がわからなかった。血鬼術が彼女に伸びる瞬間までそこに居たのに、瞬きもしてない自分の視界の片隅に立っていたからだ。
「あの子は今…なにをしたんだ」
そう呟くと同時に戦闘が始まる。
疑問に思う気持ちを抑えて見極めるために意識を集中する。
水の呼吸を使った流れるような戦闘は鬼殺隊になったばかりとは思えない洗練された素晴らしいものだと言って間違いがなかった。
頭の回転も良く、頸の場所が不明の鬼に対して決して不利になることもない戦闘は続いていく。
鬼の本体を捉えた雫の攻撃で姿を現し、追い詰められた鬼は彼女の周りに数十に及ぶ針の攻撃で完全包囲までしてみせた。
おそらく柱であっても回避か牽制の一手になるであろうその攻撃を、彼女は最初に見せた急に現れるように見える速さで鬼の背後へと現れた。
(やはり追えない)
速さでは柱の中でも自信がある自分の目に追えない彼女の速さはありえない、その一言に尽きた。しかしさらに驚愕させられた事が目の前で起こった。
(……頸が、落ちた…?)
回避するだけならまだ速いなと片付ける事ができた。しかしあの状況で回避しながら頸を斬るとなると、難易度がさらに何段階も跳ね上がる。
いつ斬られたのかさえ分からないその攻撃を最後に鬼の体が塵となって消えていくのを見ながら、大竹雫の重要性を伝える為、どう説明しようかと考えながら雫と合流するためにその場から移動した。
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丸石が敷き詰められた日本庭園に大谷誠は片膝をついて伏していた。
「風柱大谷誠、ただいま戻りました」
「ご苦労だったね。柱として忙しい君にわざわざこのような任務をお願いしてしまって、すまない」
「いえ、今回の任務は鬼殺隊にとって重要な一件であると認識しております故、お気遣い無用です」
「ありがとう、そう言ってもらえると助かるよ」
それでと間を置く。
「彼女…君の目から大竹雫はどんな子だったのかな?」
誠は少し考えつつ発言する。
「……率直に言わせてもらいますと、技の練度、判断力といったものは柱と肩を並べる半歩手前といったところでしょうか」
それを聞いた少年はそうかと頷こうとすると、しかしと言葉が入る
「僕の目でも追うことができない速さは、柱をもはるかに凌駕しています」
少年はその言葉に少し驚きつつも、嬉しそうに微笑みが溢れる
「……君がそういうのなら、そうなのだろうね。
こうして新たな花が咲き始めるというのは、喜ばしいことだ。
報告ありがとう誠、雷の呼吸がない現柱の中で速さでは右に出る者のいない君の発言はとても大きい。感謝するよ」
「ありがたきお言葉、お館様のお望みならばいつでもお任せください。…では次の任務が入ってますので失礼します」
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そう言った帰り道、誠は考える。
もし、大竹雫と手合わせしたら…。
どう想像しても、最初の一手で自分が負けるところに行き着く。
更に、もし、殺し合いだとするのであれば。
自分の首が気づかぬうちに斬られている想像が容易にできてしまう。
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