第四話、其は砂塵の中の運命。
暑い。半端じゃなく暑い。おいしい水を買い込んでなければ死んでいたと言っても過言ではないほどに暑い。明らかにここだけ気候が異常である。
地方のごく一部にだけ砂漠が存在して、砂嵐まで吹き荒れてるというのがそもそもおかしい。赤い肩をした鉄の悪魔でも通ったのだろうか。
だが暑いのはまだ我慢出来る。それよりとにかく息が苦しい。冷静に考えれば吹き荒ぶ砂塵の中でまともに呼吸が出来るわけがないということにもっと早く気付くべきだった。この中を視界確保用のゴーグルだけで駆け抜ける主人公は、一体どうやって呼吸しているのか。もしかしたらゴーゴーゴーグルは実はゴーグルとは名ばかりのガスマスクで、呼吸器もカバーできるようになっているのかもしれない。特殊部隊か何か?
今は既にメタグロスのリフレクターによって防御してもらっているものの、さっきまでの状態が軽く拷問だったので、かなり体力を消耗した気がする。かれこれ1時間ほどさ迷っているにも関わらず、見つかるのはサンドやナックラーばかりでヤジロンは全く見当たらないというのも疲労感に拍車をかけていた。
最初はレアコイルとコドラに周囲の確認と警戒をしてもらうつもりだったが、あまりに視界が悪く見失いそうになるので止めた。なので僕とメタグロスが目視で探しているのだが、いくらなんでもここまで見つからない事があるだろうか?
以前「ゲームの世界では確かに特定の場所を延々と探れば目当てのポケモンは見つかっていたが、この世界では必ずしも目当てのポケモンがゲーム通りの場所にいるとは限らないんじゃないか」、と考えたことがあった。実際の所、ココドラは石の洞窟にいたしレアコイルもニューキンセツにいたので、大丈夫だろうと勝手に思い込んでいたが、もしかしたらこの世界でのヤジロンは砂漠には現れないのかもしれない。
時間が経ったからか、砂嵐の勢いは砂漠に入った時よりかは弱くなってきた。それに伴って視界もかなり開けてきたが、それでも全然見当たらない。となれば、ここには生息していない可能性も考慮せざるを得ない。もしこのまま手がかりの一つも見つからなければ、もうお手上げである。
ひとまず引き返そうかと思ったその時、不意にメタグロスが何かを捉えた。メタグロスの指し示した方向を見ると、砂塵の中に薄ぼんやりと影が見える。ゆっくりと近づくように指示を出し、少しずつ近寄っていくと、その朧気だった輪郭がよりはっきりとしてくる。
そこには先程まであれほど探しても見つからなかったヤジロン達が、両手に粘土のようなものを抱えて集まっていた。何をやっているのかとしばらく観察していると、彼らは回転しながら移動を始め、どこかへと向かっていく。折角見つけたのに見失う訳にはいかない。僕達は慌てて彼等を追いかけていく。
ヤジロン達は、いつの間にか現れていた砂の塔のような建造物の中に入っていった。僕達もそれを追いかけて砂の塔の中に突入したのだが、中に入ると同時に入口が塞がれてしまった。ホラー映画じゃないんだからやめて欲しい。
念のため試してみたのだが、塔の壁……というよりもこの塔自体が、メタグロスのコメットパンチを以ってしても破れないほど強力な力で護られており、とてもでは無いが力押しでは脱出出来そうにない。本当にやめてくれない?
だがしかし、僕はまだ慌てていない。今まで見てきたものや読んできたものの知識からいけば、この手の謎の建造物は大概仕掛けを解くと脱出できるようになっているからだ。砂の中に埋もれた骨らしき何かが見えるけど気にしない。むしろ気の所為だ。絶対。きっと。多分。
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