第15話 聖者の兄
「シャミア、ジョニー、それをどこで手に入れたのですか?」
「……自分が作りました」
「発端は、こいつが見たという敵の魔道具だ。それで敵の“遠くの者に話す”というのをこいつなりに作り出したのがコレだな。ジョニー、合図を出せ」
「はい。ただ、敵の技術の方が上回っていると予想できるので通話はしません。適当な音に対して寮の部屋にいる姉さんが適当な音を返してくれる手筈になってます」
そうしてアンテナの向きを寮の部屋の方に向けて、ボイスパーカッションをやってみる。うん、ちょくちょく練習しているが前世ほどのものは出来なかった。残念。
それに対して姉さんは、部屋にあった金属を叩いてカンカンとリズム良く返してくれた。とりあえず通信は成功。限界距離とかも調べたいが、それは敵の目のない所でやる事だろう。
「……お前、その音を口から出すとかそっちのが奇術じゃないか?」
「ボイスパーカッションです。才能ある奴ならちょっとやれば基本くらいは出来ますよ」
「……なるほど、遠くの者に声や音を伝えているのか。これを敵が使っているとなると、恐ろしいな。距離次第では伝令なしに大規模な戦略を取れてしまう」
「俺の見た敵の使っていた魔道具は小型でした。密偵がそれを常に身につけていてもおかしくはありません。そして、この試作品はある人に対してだけ声を届けるなんて便利な機能はついてません」
「敵が会話を聞いて、こちらに技術の試作品がある事を知られては不利になるばかりという事か。感謝する、ジョニー。だが、どうして今まで報告しなかった?」
「説得力の無さです。セテスさんもコレを見るまで遠くの人と話す魔道具、なんて想像も出来なかったでしょう?」
「……なるほどな。千の言葉より一つの現物というわけか。……承知した。これから教団内部を洗い出す際の判断材料とさせてもらう」
「なら、怪しい人の部屋洗い出す時にサンダーを使える魔導師を同行させて下さい。コレ、サンダーの発する電気の力に反応して音を鳴らすんです。こっちが一端しか掴んでないとはいえ、掴んだ一端から見えるものはあると思うので」
「……では、念のため確認させて貰う。ジョニー=フォン=コーデリア、お前はどうしてシャミアと共に来た? 言ってはなんだが、シャミアはフォドラの外の人間だ。疑うのが自然だろう」
「そうですか?」
「まぁ、コイツは相当な変わり者なんだよ。それで納得しておくのが一番楽だぞ、セテスさん」
「……それもそうだな。では戻って良いぞジョニー。貴重な情報、感謝する」
「……あー、ちょっと待って貰っていいですか?」
「……まだ何か?」
「レア様、あなたアンテナを見た時に驚愕の反応を示したのに、どうして実際に音が帰ってきた時に驚かなかったんですか?」
「……それは、いま聞くべきことですか?」
「クロードから聞きました。セテスさんはガルグマクにそぐわない書籍の検閲をやってるって。それは、おそらくかつて解放王ネメシス達がやってのけた悪行を再びこの世に起こさないため。その悪行とは……」
ゴクリと息を飲むセテスさんとレア様。悪行をなした事は否定されなかった。つまり、その時に敵のルーツはあるのだろう。
「わかりません!」
「……そこに確証はないのか」
「いや、だって検閲されてますし。わかったら預言者ですよ」
「けど、今の反応で少しわかりました。ガルグマクも英雄の遺産もそうですけど、女神が作ったんじゃなくて、かつて、1000年くらい前の技術者達が知恵を出し合って作り上げたもの。けど、その後の戦争で技術の伝承が行われなかったために中途半端な記録がレア様が持っている記録にはある。……ってのが仮説です。あ、答えなくて良いですよ、反応で大体あたりってのは分かりましたから」
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