第4話 学生たちと旨味成分
「やめろぉ! それ作るのに一年くらいかかるんだよぉ!」
「でもよぉ! この味がうめぇんだ!」
「そうですよ! こんなソース見たことありません!」
「ダスカーにも、この味はなかった。これなら殿下も……」
「……コレ、ブリギット持ち帰ります! 作る、秘伝、教えて下さい!」
それは、ベレス先生が休日の釣りに目覚めた日のこと。
せっかくなので魚醤を使った料理でも振舞ってみようと考えたのが運の尽き。
人は、旨味成分には勝てないッ!
いや、原材料のアミッドゴビーはいいのだよ、簡単に取れるし。
問題は塩だ。魚醤を作る際に結構な量の塩を使うので、いくらコーデリア領が海に面しているとはいえ金がかかるのだ。
やることやったら何かのドラマで見た鉄板で海水を煮る方法でコーデリアを塩の産地に出来ないかと画策しているが、そもそもこれ以上人を雇う余裕がない。なにせ自警団の連中にさえ畑を与えて屯田兵としてコスト削減をしているのだから。その畑もそう良い所ではないのだがな!
そんな理由から、狩りやらで稼いだ金でようやく買えた塩で作ったのがこの魚醤であった。まだ製法も実験段階だが、とりあえず形にはなっている。量産は難しいだろうが。
「発酵を進める魔法でもあれば荒稼ぎできそうなんだがなぁ……」
そんな事を考えて、そういえばここが学び舎であることに気付いた。書庫番のトマシュさんあたりに聞いてみようか?
でも、あの人なんか違うのだ。なにやら秘密がありそうで、仲良くなるになるには覚悟が必要だろう。
まぁ、それを言うならこの修道院にいるのはどいつもこいつもアレなところがあるのだが、それで足踏みしていて良いことはそんなにないだろう。ちょっと話を聞いてみるのも良いかもしれない。
そんな事を、匂いに釣られてやってきたグリットさんやカスパルにフレンちゃんを見てこれはまじめにやらないとあかんなと思ったのだった。
「お前ら! もう好きに使え! ただし魚醤作るから塩とアミッドゴビー集めてろよ!」
「秘伝、見たい、あります! 私、付いていきます!」
「じゃ、トマシュさんのとこ行くぞー。あの人ならなんか知ってるかも知れないし」
そうして、ペトラを連れて書庫へと行く。クラスも生まれた国も違えど、なにかと縁のある彼女である。ほどほどに遠いので、話題が尽きる事もない。言葉も違うというのに、本当に良く頑張ってるなーと思う次第である。
「……ジョニー、何か、話しやすい、あります。何か、ありますか?」
「あー、俺も言葉覚えるの遅かったからなー。そういうフォドラの言葉のつっかかりってのがわかるのさ。だから、そういう言い回しを避けてるって感じよ」
「ジョニー、フォドラの人、違う、ありますか?」
「んー、実は俺の魂は日出ずる国よりやってきた男なのだ! とか言ったら信じる?」
「信じます。ジョニー、無駄な嘘、話す、人、違います」
「んー、ブリギットの信仰とかの問題かねー? 家族からは鼻で笑われたんだが。英雄病かって」
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