続・ねじれて絡まる絆と龍
「……なぁっやっぱり声かけないか」
「いやでも……今まで声かけなかったのに急に声かけたって……」
何も変わらずに時間が進み続けていくことに焦りと戸惑い、そして気まずさを覚えながらも不変に進んでいく関係は何時の間にか歪な繋がりを生み出していった。勇気を出そうとする者もいるが思わず尻込みをしてしまう者も多いが、それらを向けられている者は一切気にも留めていない。いや、興味すら持っていないのだろう。
「龍牙、親父ととも話し合ってその……少しだけ前に進めた気がする」
「そうかよかったじゃないか、これからエンデヴァーにワザとか教えて貰えよ」
「……実は週末に教えて貰う事になってんだ、赫灼熱拳を。お前も一緒に如何だって誘えってよ」
「週末か……ああ、その日なら多分大丈夫だ」
あの日から一人の少年はもう一人の大切な友人を得ていた。誰もがその圧倒的な力と姿に脅えて声を出さなかったあの日から、あの時から自分達との溝が決定的になったのかもしれない……歩み寄った轟は自らの境遇と相手、龍牙の境遇に共感しつつも支えたいと思った。それは確かな絆を構築していた、二人目の友人として彼も喜ばしく受け入れている最中でその光景が自分達の胸に突き刺さっていくのである。
「今日は」
「先輩に誘われてる、悪いな」
「いやいいさ、またな」
そう言って寮から足早に出て行く表情は明るく眩しい物だった……林間合宿、神野事件を乗り越えて尚……黒鏡 龍牙はA組との距離を取り続けていた。その例外といえるのが体育祭にてライバル関係にして親友の関係を築けた常闇、そして複雑な両親によって生み出された絆によって手を取り合った轟の両名のみ。だがそれだとしても龍牙に何の後悔も寂しさも無かった。何の戸惑いも無いままに……彼は喜び勇みながら向かって行く。A組の皆からの声など聞こえない、それでも構わないと言いたげにしながらそのまま―――
「ねじれ先輩お待たせしました」
「ううん全然待ってないよ~、それと先輩呼びはダメって言ったよね、私言ったよね?」
「すいませんつい―――それじゃあ行きましょうかねじれちゃん」
「うんいこいこ龍牙君♪」
自分を待っていた彼女の手を取りながら、腕を組んで身体を密着させて互いの体温を感じながら、楽しみながら進んでいく。
「ミリオ先輩に環先輩はいないみたいですし今日は二人っきりですねねじれちゃん」
「うん一緒一緒~♪」
夏休み、神野事件後に導入された学生寮。そして今行われているのは仮免試験へと向けての必殺技の構築、その日は既に教員達指導の時間は既に終わっており自主練に龍牙はねじれと共にやってきていた。一緒と喜びながら背中ら抱き付いてくる彼女の力は強く、自分の身体に龍牙を一体化させようとしているかのようにも思える。あの日から、毎日行っているそれを龍牙は優しく手を置きながら囁く。
「大丈夫ですよ、俺はもうどこにも行きません……絶対に」
「……うん、わかってるよ。でもね、私こうしていたいの……不思議だよね、分かってるのにね……」
弱弱しい声に少しずつ生気が宿るように力が入っていく。ヴィラン連合による龍牙誘拐は解決したとはいえ、ねじれはそれを知った時、リューキュウの事務所にて心の奥底から後悔と絶望を溢れ出させていた。それは少し前から龍牙の事を意識するようになったからか、直接の接触を避けたり龍牙の視線に頬を赤らめて目をそらしてしまう事が増えたのもあっただろう。もう会えなくなるかもしれない、そんな不安でいっぱいになったねじれは、無事に戻って来た龍牙に何処か執着するようになっている。
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