ハーメルン
Re:START of “DECADE” ~輝きの世界より~
Ep.9:「愚者の末路」
夕焼けで海が光って眩しい、と果南は家のテラスから見える景色に目を細める。
そして同時にそれは、まるでライブ会場のようだとも彼女は思った。
キラキラと光る海がサイリウムを振り歓声を送る観客で、あの太陽がそれに応えてステージで歌うアイドルのよう…。
とてもとても輝いている素敵な世界…そこまで考えて果南はやれやれと首を振る。
今までそんな風に思った事など一度も無いと言うのに…きっとこれは、ここ最近の周りの環境の変化のせいだろう。
全く、我ながら女々しいものだ。
「これで良し、と…。」
似合わぬ妄想を垂れたなと果南は1人苦笑いを浮かべながら、残りのダイビング機材を片して一息吐く。
今日の仕事はこれでおしまい…さて、この後はどうしたものか。
珍しく変な事を考えてしまったから、その変な考えを払う為に少しキツめのランニングでもしようかと考えた果南。
そんな彼女の下に訪ね人が現れた。
「今日はもう店仕舞いか?」
「貴方は…。」
テラス下を見ると、いつしか会話をした…ツカサだったか、確か千歌の家に世話になっていると言っていた彼がそこに居た。
「そうですね、時間も時間ですし…ダイビングをしたいなら、また日を改めて…。」
果南は口ではそう言ったものの、彼がそんな目的で来た訳で無いのは分かっている。
「なら、時間あるよな?話したい事がある。」
…本当に、最近は周りの環境が変わってきているものだ。
「それで、話って?」
「…お前の友人の、小原 鞠莉…あいつが本格的にスクールアイドルを始めると言っていた。」
「…そうですか。」
「あいつだけじゃない、浦の星の生徒会長の黒澤 ダイヤも誘うそうだ。あと、お前もな。」
ツカサをテラスに上げ、彼と共に席に座った果南ではあったが、正直に言えばすぐにでも席を立って話を打ち切りたい所だ。
彼女
(
鞠莉
)
もわざわざ関係の無い人を寄越してまでやるとは、諦めが悪いものだ。
「…私はスクールアイドルはやりませんよ、鞠莉にもそう言っといてください。」
出来ればキツく、と付け加え、果南は席を立って海を眺める。
海の様子は先程とあまり変わっていない。
目の前に映るキラキラとしたステージのままの海は、まるで今話題に上がった彼女の心を現しているかのよう。
本当に、あの子は諦めが悪すぎる。
これが冬の海だったら、今頃はこのステージも日が沈んで終わっている。
そうすれば、さしもの彼女も素直に諦めが付くだろうに…。
なんて事を考えて果南はそのままツカサに話の進展はこれから先も無いと告げようとする。
「聞いたぞ、お前達の間で何があったのか。」
「っ…!!」
が、予想外の言葉が彼の口から出てきた為、果南は否が応にも振り返って話を聞く姿勢を取ってしまう。
まさか、流石にそれは無いであろう。
いくら彼女とて見ず知らずの誰かにそんな事…彼の言っている事はでたらめだ。
「2年前、やってたんだろ?スクールアイドル。」
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