ハーメルン
ストライクウィッチーズ~約束の空~
第十一輪 生まれてきてくれた君へ

「宮藤!聞こえるか宮藤!聞こえていたら返事をしろ、ユーティライネン少尉!リトヴャク中尉!」

坂本が通信機に呼びかけるが帰って来るのはノイズだけで、名前を呼んだ仲間たちの声は一つとして聞こえない。

「今の薄気味悪い音は一体なんなんですの…」

ペリーヌが不快と疑念に顔を歪める。
パーティーの料理作りと飾り付けを進行していた最中、置いていたスピーカーから突然不気味な音が流れ出した。
とても人間が出せるものではなかったあまりに異様な音に坂本たちは作業の手を止め、原因を確かめるべくこうして坂本が夜間哨戒に出た三人に連絡を取ろうと試みているのだが、一向にあちらから返事が返ってくる様子はない。

「音というよりは歌のように聞こえたがまさかネウロイの」

「しかもあの歌はサーニャの歌と同じだった、となると…」

「ネウロイがサーニャの歌を理解し、真似ているというのか。そんな話がありえるのか」

「ありえないとも言えないわ。ネウロイは日々変化を遂げている。サーニャさんの歌声に反応したネウロイが彼女の歌を聞いて、真似ていたとしてもおかしな話ではないわ」

ソーマと坂本の言葉から考えうる結論を口にしたバルクホルンは疑問とやや否定的な色を含んで呟く。
だがミーナはバルクホルンとは対照的に頤に手を当てて推測を述べる。

「とにかく今は宮藤たちのところに急ごう。通信が通じないってことはネウロイと交戦してるはずだ」

「そうね、ここで話していても仕方がないわ。皆、すぐに出撃の準備を」

救援を優先すべきとシャーリーの言葉は尤もだ。
ミーナの一声で皆一斉に食堂を飛び出して格納庫を目指す。





『オオオオオオ!』

黒と青の二色の巨体、鱗に覆われた脚と腕、雄々しく翼。その姿はまるで多くの国で幻想の存在として語られる怪物…ドラゴンを彷彿とさせる。
それは赤く染まる瞳を動かし、エイラから宮藤へと、そして宮藤に支えられているサーニャへと焦点を合わせる。

「避けろ!宮藤!」

「えっ?」

数秒後の未来を知る未来予知。自身の固有魔法で先読みをしたエイラが危険を察知し、宮藤に声を張り上げる。
その瞬間ドラゴンはグワっと大顎を広げ、そこから白く輝く吐息を放つ。

「うわぁ!」

サーニャの手を取って咄嗟に上昇する宮藤。ドラゴンの放った吐息が二人のいた場所を貫く。

「サーニャちゃん大丈夫!?」

「私は平気…!?」

回避に成功し安堵したサーニャであったが、自身の足元に視線を切り替えた時信じ難いものを見てその顔が驚愕に包まれた。

「ストライカーが凍ってる!?」

さっきの攻撃が掠っていたのかサーニャのストライカーの左側先端部分は青く凍り付いていた。
両側が機能しなくなったストライカーではどんなウィッチであろうとも航空は不可能。サーニャはもう独力ではこの空に居続けることもできない。

「そんな…」

「ビームじゃなくて冷気ってことかよ…本当になんなんだよあいつ」

サーニャの歌に反応することといい、姿を変えたことといい、これまでの倒してきたネウロイとは絶対的に何かが違う。
―舐めてかからない方がよさそうだ

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