S級への試練
「おっすメタルナイト……何でお前倒れてるんだ?」
「オマエヲS級二上ゲルノニ苦労シタカラダ……」
「機械の体で休む意味なくね?」
サイタマがヒーロー試験を受けてから数日後のZ市郊外、サイタマの自宅でメタルナイトとサイタマは同居していた。相変わらずメタルナイトは生身の姿をサイタマに晒さないままであり、サイタマはそれによってメタルナイトが機械人間と勘違いしていた。
メタルナイトはむっくり起き上がると、座布団に座った。
機械とハゲが座って話をしている姿は中々にシュールな光景である。
「精神テキナモノダ。ホンライハC級開始ダッタゾサイタマ」
「ピンとこねーけど、助かったのか?」
「C級下位ハ民衆二イッパンジン程度ト認識サレテモオカシクナイ」
「うげ、それは嫌だな……ありがとな」
実際にサイタマがS級18位となれたのは、事前にメタルナイトがヒーロー協会に詳細なサイタマの戦闘データを送っていたのが一番の理由である。ヒーロー協会においてはメタルナイトの科学力と分析力は危険視される程のものであり、サイタマの強大な力を考えてS級に推薦したメタルナイトの発言は無視できるものではなかった。最終的な決め手となったのは、サイタマのマジ殴りが偶然地球に迫る隕石を破壊したことだろう。データと実績がうまい具合に噛み合い、童帝やアマイマスクなどもサイタマの圧倒的な力を認めざるを得なかった。
「礼ヲ言ウ必要ハナイ。地球ノ危機ダ、オマエガS級デナイトオレガ困ル」
メタルナイトが他人のサイタマをわざわざ推薦した理由はこれだった。S級でないとS級のみを集めるような特別なヒーロー協会の緊急招集に呼ばれることがなく、特化した戦力として作戦に組み込まれることがなくなる。サイタマのようなイレギュラーが最前線の戦況を把握しないまま、戦場に突っ込むのはマズいだろう。
最悪立てた作戦が全て水の泡となる可能性がある。
「お前機械だけどいい奴だな!」
「……勘違イシテイルヨウダガ、チャントロボヲ操ッテイル生身の肉体ハアルカラナ?」
「じゃあ今度一緒に鍋食おうぜ。今度は俺が金出すからさ!」
「コトワル。俺ハ俺ノ目的ガアッテオマエノ傍二居ル。慣レ合ウ気ハナイ」
実際メタルナイトの保有している財産なら自腹で高級料理など、いくらでも食べることができる。サイタマの傍に居るのは、単にその強さの秘密を探るためにすぎない。
そう思いつつも間近でサイタマの力を目にしたメタルナイトの心中は徐々に変化し始めていた。本来サイタマの監視にわざわざロボを差し向ける必要はないはずという事実に、天才のメタルナイトが気付いていないのがその証拠である。
そんな二人の団らん中にピンポーンという来客を告げる音が流れる。
「俺が出るけど、お前は出てくるなよ?」
「ワカッテイル」
サイタマはメタルナイトに釘を刺して玄関に向かった。
メタルナイトが機械の体で応対すれば、再びパニックになるであろうことは容易に想像できる。
サイタマはドアを開ける。来訪者は、青い髪の美男子だった。
「S級18位、サイタマだな?僕はアマイマスク。キミがS級に相応しいかどうかため」
サイタマはアマイマスクの言葉を遮り無言でドアを閉め、居間へと戻っていった。
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