ハーメルン
蜘蛛の対魔忍は働きたくない
012

 まずは忍法で電磁蜘蛛を作り出す。そして対魔忍の任務に駆り出されてからずっと愛用している弓(ちなみに俺の弓は、弦の真ん中の「中仕掛け」と呼ばれる部分が幅広く、矢だけではなく礫も放てる「はじき弓」と呼ばれるもの)に電磁蜘蛛を矢の代わりに番えて一気に敵のアジトに向けて放つ。

 電磁蜘蛛が予定通りの軌道で飛んでいったのを確認してから目を閉じ電磁蜘蛛と視界を共有すると、夜空を飛ぶ景色がまぶたの裏側に広がった。

 俺はこの電磁蜘蛛の視界を通じて見る空を飛ぶ光景が好きだ。実際に飛んでいるのは電磁蜘蛛とはいえ、こうしているとどこまでも飛んで行ける自由な気分になれるので、不謹慎だとは思うがこうして電磁蜘蛛を空から目的地へと移動させているほんの僅かな時間が任務中での癒しとなっているのだ。

 ……嗚呼、本当に対魔忍とか任務とか、全ての事を忘れてどこまでも飛んで行きたい(涙声)。

 しかしそんな癒しの時間もほんの二、三分で終わってしまう。電磁蜘蛛が武装勢力のアジトであるビルの屋上に着いたところで俺は意識を切り替える。

 いつもだったらこのまま電磁蜘蛛を潜入させて偵察をするのだが、今回はここで新たに得た邪眼の力を試す事にする。

 これは一度も試した事はないのだが、それでも感覚で分かる。どうやら俺の邪眼は、電磁蜘蛛の視線にも「魔」の力を与えるようで、今のように電磁蜘蛛を使えば実際の左目では視線が届かない遠距離にでも邪眼の力が使えるようだ。

(それじゃあ早速使ってみますか。……『集まれ』)

 俺は感覚で理解できた邪眼の使い方に従って、電磁蜘蛛の視界を通じてビルの屋上の出入り口を照らす蛍光灯を見てそう念じた。すると初めて邪眼の力を使った時と同じ様に、蛍光灯の光が消えて、同時に全身から青白い光を放つ半透明の蜘蛛が現れた。

 半透明の蜘蛛は体の大きさが三十センチ以上もあり、電磁蜘蛛の三倍以上大きく、脚も含めれば更に大きく見えた。外見は蜘蛛型のロボットといった感じで、八本の脚の先端が鋭い刃となっており、偵察特化の電磁蜘蛛とは対照的にこちらは戦闘に特化しているのが見ただけで分かった。

 ……それにしても電磁蜘蛛も◯ョジョの◯タンド能力を参考にして考えた能力なのに、こっちの半透明の蜘蛛の方がスタン◯っぽいな?

『………』

 俺がそんな事を考えていると、半透明の蜘蛛が電磁蜘蛛に視線を向けてくるのが分かった。こちらを見てくる半透明の蜘蛛の目は何かを要求していて、その視線を受けて俺は邪眼の使い方と同じ様に、感覚で半透明の蜘蛛の事が少し理解出来た。

 この半透明の蜘蛛は、電磁蜘蛛のようにこちらの命令に大人しく従ってくれる様な殊勝なヤツじゃない。コイツはただ一つの命令を、自分のやりたい事をただひたすらに実行する……そんなヤツだ。スタ◯ド能力で言えば自動操縦型といったところだろう。

 そして半透明の蜘蛛が実行するただ一つの命令は「敵の抹殺」。俺と電磁蜘蛛以外の存在を全て敵とみなして無差別に攻撃し、そしてその許可を早く寄越せと先程から無言の視線で催促しているのだ。

(また随分と攻撃的な能力だな。……だけどまあいい。基本は偵察だけど、可能ならば武装勢力を倒せっていうのが今回の任務だし。よし、『行け』!)

『……………!』

 俺の合図に半透明の蜘蛛は嬉しそうに体を震わせて行動を開始した。しかし……。

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