7 さらば! 獣王クロコダイン
「キィ~ッヒッヒッヒ! この妖魔司教ザボエラの手にかかれば、マホカトールの結界をすり抜ける程度は造作もないこと……! さあ、鬼面道士ブラスよ! ワシと共に来てもらおう!」
その方向には誰もいない。
「ってバカな!? 勇者ダイの育て親がいないじゃと!? サクッと人質兼兵士に変えて、クロコダインにダイを攻略させる策が……! いったいどういうことなんじゃあ!!」
なお『サクッと』は『策』とかかっているダジャレである。
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「――ってゆー感じに、今頃なってると思う」
ロモスの宿屋で、俺はポップとハドラーに言った。
マァム? ネイル村を守ってるんじゃない?
「なるほどなあ。それでブラスじいさんを魔法の筒に入れて……」
「確かにザボエラがやりそうなことだ」
ブラスじいちゃん入りの魔法の筒を磨きながら、だ。
中は狭いこと以外は結構快適で、腹も減らないらしい。
筒から出すと魔王の邪悪な意志に操られちゃうから、ここでは出せないんだけど。
そこでポップが疑問を持った。
「でも島には他の怪物もいっぱいいたろ? 代わりにそいつら攫ってくるかも知れないぜ」
「いやー意味ないだろ、みんなが狂暴化した時って、マジで狂暴化して同士討ちしてたもん。あれじゃ人質にも兵士にも適さないよ。それは先方も分かるんじゃないかな」
まあ希望的観測だが。
言うて全員を冒険に持ち運ぶには、魔法の筒が足りないし。そこは仕方ない。
「ピィー」
「いやゴメちゃんの力で魔法の筒増やすのもね……。微妙なところだけどさ」
クロコダインに使わせることを考えると、やっぱり誰か1体が限度だろう。
そしてそれなら、ブラスじいちゃんほどの適任はいない。で、そのブラスじいちゃんがいないのだ。
ザボエラが諦めてくれることを祈ろう。
ともあれ、翌日。
「出て来いダイ!! さもなくば――ロモス王国は今日で壊滅だ!!!」
朝っぱらからクソデカい声で叩き起こされた。
この声はクッコロダイン……!!
俺は窓を開けて叫んだ。
「俺はここだーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
口の中で音波を無数に反射させて指向性を高め、上空に向けた大音声は、空飛ぶ百獣魔団の三半規管を揺らしに揺らして、地上に墜落させた。
「ぐわああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
ガルーダに掴まれたクロコダイン(全裸ではない)も墜落した。
ちょうど宿屋の前の通りだ。
「ポップ、ハドラー、雑魚を頼む。俺はあのワニに引導を渡すから」
「えっ、別行動? やだよ、お前の傍が世界一安全だから、おれはついてきたんだぜ」
ポップが不平を述べた。
「お前にとってだけ世界一危険な場所にするのもヤブサカではないんだが」
「この大魔法使いポップに任せろっ!!」
ポップは飛び出していった。
「オレが人間を守ることになるとはな……!」
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