やってきました異世界
「やってくれたな、アイーシャ夫人め」
服についた土を払い落としながら現在、俺が置かれている状況の元凶であるカンピオーネの一人アイーシャ夫人に向かって文句を漏らす。
アイーシャ夫人の権能の一つ『妖精郷の通廊』の制御不可能な発動によって門に吸い込まれ、吐き出されてみれば、空は紫色の俺の居た世界とは絶対に違う異世界。
「権能は……使えるみたいだな」
自分の中に意識を集中すると権能があることは感じられる。ならヘルメスから簒奪した『自由な旅』で帰れるか。
『自由な旅』はヘルメスの旅の守護神という側面を強くしたものでアイーシャ夫人の『妖精郷の通廊』と似て空間の移動が出来る、とはいえ、なにかと制限があって使い勝手は悪いけど。
当てもなく適当の歩いていると横からいきなり衝撃が襲い、顔に慣れた感触が当たる。
「ご、ごめんにゃ!」
体に乗っていた人物が俺の上から降りる頭には猫耳、腰からは二本の尻尾が伸びているのが分かる。
……やっぱり異世界ですか、そうですか。
あ~、と頭に手を当てていると猫耳少女は自分のせいで怪我をしたのかと心配して俺の顔を覗き込んでくる。
「えっと、大丈夫かにゃ?それより私、逃げないといけにゃいの」
「見つけだぞ、はぐれ悪魔の黒歌!」
「にゃ!?」
黒歌という少女が走ってきた方向からスーツにも似た服を着ている男が三人やってきた。
「おい冥界に人間が居るぞ、どうする」
「どうせ迷い込んだんだろ、殺しておけ」
「そうだな、どうせ人間如き殺したところで」
っは?三下の癖になんつった。
「…ごめん、巻き込んじゃって、私が囮になるからその間に逃げて!」
俺と男たちの間に入るように立ち、戦おうとする黒歌。
「なあ、黒歌つったっけ、お前さ人間界みたいな人間が住む世界の行き方とかさ分かる?」
「え?あ、分かるにゃ」
なら好都合、寧ろ俺の方が恩を売るべきだ。
「なら道案内頼むわ、代わりにそこの三下は俺が倒すから」
立ち上がり、権能を使う為の聖句を口にする。
「《滅びの時は来た、穢れし世界。混沌をもって全てを無に帰す。この牙、この爪は世界を殺す、我は獣なり》」
右腕は黒と赤の入り交じったオーラに覆われ、人のものから人ならざるもの、鋭利な爪に逆立つように立つ刺は獣の毛にも見えるものへと変貌を遂げ、それを見た黒歌と男たちは驚愕する。
「神器か!」
神器?この世界には神器っていうもんがあるのか、まあ、あとで聞けばいいだけの話か。
「悪いね、俺の方もピンチなんだわ。というわけでくたばれ、てか大人数で女一人を追うなんてどうだよ」
「貴様には関係ないことだ、何よりそんな良い女を逃がすわけないだろ」
「そうだ、鎖に繋いで死ぬまで犯し続けてやるさ」
……こいつ等はクズだわ、なら殺しても問題ないか。
「もういいよ、黙れ」
権能により強化した体で地面を全力で蹴り移動する。
反応おっそ!これは権能使う必要もなかったかもな。腕を大きく振りかぶって一人を殴り飛ばし、二人目を軽く拳を握って押しつぶす、三人目は蹴り飛ばすと木の幹を破って向こう側に飛んで行った。
「やり過ぎたか」
「…強すぎるにゃ」
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