15.第三の矢
この身に宿った魂の声に従おう。人として生きて、物語を変えよう。お釈迦様のお言葉で、わたしはそう決めた。
決めたけど……だからと言ってそう簡単にどうにかできるはずもない。
まず、現状でカーズ様をどうこうするのは不可能だ。これは単純にわたしが力不足な上に、ドジこくとカーズ様以外とも同時に戦う羽目になるからだね。
何より、一度でも失敗するともう取り返しがつかない。これは本当に最後の最後の手段だ。時代がジョジョ原作に追いつくまでは、極力避けるべきだと思う。
じゃあ他に何ができるかって言えば、強くなるための訓練以外は世界の歴史そのものを変えることだろうけど……一個人がどうこうできるほど歴史はヤワじゃあない。
確かに歴史を変える系の逆行転生モノはジャンルとして存在するけど、あれは腰を据えて何かしらの組織を構築するなり乗っ取るなり、しっかりした基盤を作って初めてできることだ。
根無し草の一個人であるわたしには手が出せない。カーズ様からの命令であちこち動かなきゃいけない以上、この選択肢も選べない。
ならどうすればいいのか。しばらく考えたんだけど、ひとまずわたしは死にそうな人たちをできる限り助けようという結論を出した。
紀元前のこの時代、人の命は驚くほど安くて軽い。社会制度は未発達だし、科学や医療も同様だ。倫理観なんてあまりにも薄い。だから二十一世紀人からは信じられないくらい、簡単に人が死んでいく。そんな人たちを、まずはできるだけ助けようと思ったんだ。
もちろん、元がただの文系大学院生だったわたしに科学や工学、医療方面の活躍は無理だ。人文系の知識なんて、この時代じゃあほとんど役に立たない。
でも、今のわたしは柱の女だ。たとえ元がヘタレの一般人でも、人間を大きく上回る戦闘力がある。だからせめて、荒事で命を落とす人が出ないようにしよう。居合わせた場所で、理不尽に殺される人が出ないようにしよう。そう思ったんだ。
その上で、いずれ到達する未来で、その時代のジョジョたちの助けになる。
肩を並べて戦えるならそれでよし。それができなくても、スピードワゴンみたいに彼らを支えることができるならセカンドベストだろう。
と、以上がわたしが考えて出した答え。とにかく手が届く範囲の人は助ける。それを念頭に置いて生きていくことにした。
それでわたしが許されるとは思ってないけど、少しでもよりよい未来のためになるならわたし、がんばれると思う。
まあ一ファンとして、原作で死んじゃったキャラが死なないようにしたいっていう欲望もないわけじゃないんだけどね。あわよくば世界を一巡させないようにできればいいかなぁ、なんて。
そのためにも、まずはもっと戦えるようにならないといけない。強くなれば、きっと助けられる機会も多くなる。ジョジョたちと同じ戦場に立てる意義は言うまでもない。
そして可能なら、回復系の能力が欲しい。戦うだけで助けられる人は限られるから、もう少し手を伸ばしたい。
特にジョジョは四部になるまで明確に回復系の能力が登場しない(波紋もそうと言えばそうだけど敵が強すぎていまいち回復効果が実感できない)からね。そういう能力があれば、大幅に死者を減らせると思うんだ。
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