ハーメルン
「信濃」戦記録

「畝傍大佐、間もなく射程圏内です。」
「重巡を下げて、
 伊勢、日向の援護に回して下さい。」
「畝傍大佐?」
「・・・勘です、
 下手をすると戦艦が他艦艇を押しのけて
 出港して来そうなんです。」
「なるほど、
 アメリカ艦艇ならではの頑丈さで
 押しのけて・・・
 あり得ますか?味方艦艇を
 押しのけてとなると、
 小型艦艇は沈みますよ?」
「緊急!!
 伊勢被弾!!」
「流石に当ててきますか。」
「日向より打電!!
 複数の艦艇に動きがあり!!
 大型艦艇が動いているとの事です!!」
「な゛っ!?」
「緒方艦長!!」
「重巡に発光信号!!
 一斉射後、伊勢、日向の援護に!!」



「ふむ、せわしないねぇ。」
「艦長、一斉射してからと打電にありますが。」
「間違いでは無いよ、
 今、主砲に入っているのは
 『対地砲弾』だ、
 艦艇には向かない、
 それを吐き出し、
 次発を艦艇弾に切り替えろと言ってるんだ。」
「艦長、
 この作戦の立案者、
 山本長官もそうなんですが。」
「例の臨時大佐か?」
「はい、山城に乗っておられる
 畝傍大佐です。」
「まぁ、なよっちい割にぁ、
 勘はよう当たる、
 それに、この重巡の発案者と来た、
 恐らく長官並みに曲者なんじゃねぇか?」
「それに。」
「『聞いた事が無い』だろ?」
「え?」
「安心しろ、俺も無い。」
「でしたら!!」
「なんで従うか?」
「っ、はぃ。」
「まぁ、いいじゃねぇか、んな事。」
「艦長!」
「それに。」
「それに?」
「重巡を戦艦の援護に回す、
 つまり、
 主砲と『雷撃』で沈めろって事だ、
 格上をぶっ潰せ、
 面白れぇじゃねぇか!」
「はぁ、艦長、
 貴方とは長い付き合いですが、
 『今度こそ次に行けそうですね』」
「あぁ、
 『畝傍大佐』
 コイツが俺達を
 『この地獄から解放してくれるんだろうよ』」


「重巡発砲!」
「進路は?」
「反転、取り舵を取っています!」
「よし、扶桑に打電、
 面舵一杯、重巡を回避しつつ、
 『左砲戦用意』
 艦艇砲弾のまま初撃を撃ち
 直ぐに対地弾へ切り替えと、打電しろ。」
「艦艇砲弾のまま?」
「はい、第一砲塔に通話できるか?」
「はい!切り替えます!」

〈はい、第一砲塔〉
「砲身に砲弾は入ったままか?」
〈はい、今、薬莢を抜く準備をしていますが〉
「いや、そのまま撃つ、
 直ぐに発射準備を。」
〈おい!手を止めろ!
 直ぐに撃つ!!射撃用意!!〉
〈はっ!〉
「第二、第三、第四は?」
「はっ、各砲から連絡、
 何時でも撃てるそうです!」
「畝傍大佐、
 どちらを撃つ積りで?」
「対空指揮所から直接指示を出します。」
「この状況で上がるのですか?」
「緒方艦長、操艦を頼みます。」
「・・・了解、
 畝傍大佐が対空指揮所に上がられる。」

「畝傍大佐、指揮所へ上がられました!」

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