第9話『深紅の猛り、焼滅の蒼』
先に動いたのはサソリの方だ。尻尾の先端をこちらに向けて、そこから紫色の液体を噴射。ハジメは横っ飛び、カナタは天歩の派生技能“空力”を使い、上へと跳躍。空力とは宙に不可視の足場を生み出し、本来であれば落下するしかない空中でもある程度自在に跳び回れるスキルである。
「ハァアアアアッ!」
そして落下の勢いも乗せて頭部に向けて大剣を振り下ろす。しかし、ガァンッ!という音と共に弾かれる。とは言え衝撃は貫通したらしく、踏ん張りが利かなくなりサソリの胴体は地面に叩き付けられる。
(かっ、た……まるで岩叩いてる気分だな)
サソリがお返しとばかりに尾の先端で直接突き刺そうとするが、それは剣を盾代わりにして受け止め、その衝撃を利用し間合いを置いて着地する。それと入れ替わりと言わんばかりにハジメの銃撃がサソリの顔面に直撃するがそれも、明確なダメージには繋がっていない。そして反撃とばかりにサソリは尾に付いてた針を飛ばしてくる。途中で無数の小さな針に分裂し、それは散弾銃の弾丸の様に飛んでくるのを、二人は避けていく。
「だったら、熱ならどうだ?」
そう言いって、ハジメはサソリに向かって何かを投げる。カンっ、と乾いた金属音を響かせサソリの足元に転がったそれは程なく爆発。やがて、燃え盛る液体がサソリに付着する。それを引き剥がさんとばかりにサソリは暴れている。
「焼夷手榴弾って奴だ。フラム鉱石を利用した三千度の炎だ。良く燃えんだろ」
「キシャァァァァア!!!」
やがて消火を諦めたのか、サソリは胴体に火がついたままこちらに向かって突撃、4本の腕でカナタとハジメに向かって殴りかかる。4本の腕で殴りかかってくるのを二人はそれぞれに捌く。
「っらぁ!」
突き出された腕をカナタが剣でかち上げ、怯んだ一瞬にハジメが2つ目の焼夷手榴弾を投げ込み、一旦動きをとめると共にハジメはドンナーの銃弾をリロードし直す。
「キィィィィィイイ!!」
その鳴き声は今までに比べて、高音のモノだった。明らかに今までと何かが違う、直後、辺りの地面が振動。無数の円錐状のトゲが生えてきた、数こそ多いが生えてくる位置や方向はランダム。どうにしか避けきれると二人は思っていたが――
「きゃあッ!」
「っ!」
生えてくる位置はランダム、それが完全に仇となった。トゲは香織とユエの隠れていた位置にも現れ、それを避ける為に香織はユエを抱きかかえながら、隠れていた柱から飛び出す形となる。そして新たな獲物の出現、それによりサソリは香織とユエに狙いを変える。
「っ!? 逃げろっ! 香織っ! ユエっ!」
ハジメが二人に向かって叫ぶのとサソリが二人に向けて針を飛ばしたのはほぼ同時。ハジメは「クソッ!」と悪態を付きながら縮地で二人の前に立つ。
「がぁぁああ!!!」
致命傷となるのはドンナーで撃ち落したり、豪脚や風爪で捌くも、何本かはハジメの肉体に深く突き刺さる。
「「ハジメっ!」」
「ハジメ君っ!」
あまりの激痛に片膝をついたハジメだが、それでも闘志はまだ折れておらず、サソリに向かって手榴弾を投げる。けれどそれは焼夷手榴弾とは別の形をしていた。
「お前等っ! 目を閉じろっ!!」
言われるままに3人が目を閉じると直後、辺りを眩い光が包み込む。先ほど投げたそれは閃光手榴弾。サソリはそれを直視してしまった為、一時的に視界不良に陥り、闇雲に腕を振り回している。その間にハジメの身体に刺さった針をハジメとカナタが抜いて、香織が治癒魔法で傷を塞いでいく。
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