第2話『ハウリアの忌み子』
ハルツィナ樹海を探索する上での問題、それは樹海は亜人の協力が無ければ迷う事確実の天然の迷宮だという事。その為、樹海を探索する冒険者の殆どは亜人の奴隷を連れている。その為、亜人はその立場から人間に対してあまり良い感情を持っておらず、原住民の亜人に協力を仰ぐのは無理だろうし、仮に誰かに対して個人的に協力を取り付けることが出来ても、他の亜人達が黙っておらず、余計なトラブルを招く可能性があった。そんな中、罪人として同族からも切り離された、言ってしまえば孤立している亜人ならばそのトラブルのリスクは低くなる、それがカナタの考えだった。なのだが……
「私の家族も助けて下さい!」
命を救われたお礼もそこそこに更に家族も助けて欲しいとお願いしてくるシアと言う少女。その言葉を聞き、ハジメとカナタはお互いに視線を合わせる。ハジメはジト目だし、カナタはカナタで気まずそうである。
“おい、どーすんだこれ?”
“流石にこれは予想外だった。まさか普通に同族内で生活してる娘だとは思わんかった”
“ったく、思いっきり関わっちまった以上、このままハイ、サヨナラって訳にもいかねぇだろ。なんかあれば、カナタが責任持ってなんとかしろよ”
“あっはは、了解”
と、念話での会話を終了してカナタ達はシアの方に向き直る。
「おら、とりあえず話だけは聞いてやるから、さっさと話せ。ウザウサギ」
「ウ、ウザウサギってなんですか!? さっきも私の事ギャグみたいなウサミミとか言ってましたし、こんなスタイルも抜群な美少女に対してなんて酷い言い方!! ショックです! 私凄い傷つきました!! お詫びに私の家族も助け、はぎゅん!」
「いいからとっとと話せ。こっちはお前のギャグに付き合ってるほどヒマじゃねぇんだ」
「は、はいぃ……」
ハジメから拳骨を喰らい、頭を押さえながら涙目になってるシアが事情を話し始める。曰く、今までハウリア一族は樹海で暮していた。そんなある日、ハウリア一族に変わった女の子が生まれたのだ。基本兎人族は濃紺の髪をしているのだが、その女の子は青みかかった白髪をしていた。それだけなら突然変異の一種で済まされたのが、問題だったのはその女の子は魔力操作の技能とある固有魔法を使えた。それが自分だとの事
「本来であれば、そうした亜人は忌み子として一族から追放されます。何せ、魔物と同じ力を持ってるからです」
(忌み子、日記に出てきたユナと言う女性と同じか……)
けれど、元々仲間意識の強い亜人の中でも、兎人族は特にその傾向が強く、同じ部族はみんな家族と言う程だ。そんな彼らはシアを犠牲には出来ず、彼女の存在を匿いながら暮してきた。けれどある日、ひょんな事からシアの存在がばれてしまった。亜人たち住む国、フェアベルゲンは魔物や魔物と同等の存在、そして自分達を差別する人間には強い敵害心を持っており、樹海にそうした者達が居れば即処刑するのが掟。それを恐れた兎人族は一族総出で脱走。最初は北の山脈を目指したが、そこで帝国兵の一団と遭遇。兎人族は少し前に香織が言った通り、愛玩奴隷としての需要がある。辛うじて逃げ切る事は出来たが、その過程で半数近くの仲間は捕まってしまった。
「それで私達は帝国軍が居なくなるまで、このライセン大峡谷に逃げ込みやり過ごそうと思ったのですが」
商品として需要があるハウリア族を集団で見つけたのだ。これを見過ごす手は無いし、態々追撃しなくても、そのうち魔物に追われて、こちらに逃げてくるだろうと踏んだ帝国軍は渓谷入り口付近に陣取り、居座ってしまった。結果ハウリア族は現在、前門の帝国、後門の魔物状態に陥ってしまっている。
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