手伝い
「…あっ、あのっ、あのっ!」
司令官の気を引く、とは言ったものの、どうやって引けば良いのかが分からない。
入り口から声をかけると、中に入れ、と言われ、なおのこと頭が真っ白になる。
「あわ…あわ…」
私の後ろで震える暁ちゃん。
覚悟を決めようとしたときに、男は椅子から立ち上がり、此方へと歩いてきた。
「…っ!」
慌てて数歩下がる。
此処からが勝負所だ。
もし私達が失敗すれば、雷ちゃんはきっと酷い目に遭わされるだろう。
だから、彼女を守るためにも、私がしっかりしないといけないのだ。
震える身体を奮い立たせ、部屋から出てきた男と向き合う。
「い、良い天気なのです!!」
私の口から出たのは、そんな言葉だった。
「…そうだな、良い天気だな。」
沈黙が流れる。
不味い。会話が途切れてしまった。
雷は既に室内に入ってしまっている。
私がなんとしても止めないといけないのに、止めないと大変なことになるのに、焦れば焦るほど脳はどんどん真っ白になって行く。
「あのっ!あの…」
何とかして会話をしようとするが、
何一つとして言葉が出てこない。
最早泣きそうになりながら、必死に言葉を探していると、救いの手を差し伸べてきたのは他でもない彼自身だった。
「大丈夫だ。ほら、深呼吸な。深呼吸。」
肩を捕まれ、悲鳴を上げそうになるが必死にこらえて、深呼吸ってなんだったっけ、そうだ、ひっひっふー…ひっひ…あれ?
「自分のペースで話してくれ。急がなくて良い」
…そんな言葉で、改めて目の前の男の瞳を覗く
「あ、あぅ…」
口から情けない声が零れた。
自分でも顔が赤くなってきているのを感じる。
それも、初めとは違う理由で。
「な、なのです…」
時間稼ぎじゃなく、普通にお話をしてみたい。
なにか話すことはないだろうか。
必死で模索していると、彼は唐突に扉を開け…
「島風?俺は少し席を外すからー」
「あっ」
「あっ」
「あっ」
私達三人の声が重なる。
あぁ…終わった。
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汚い執務室だ。
電と暁が司令官の気を引いている内に、執務室に入って思ったのはそれだった。
机の上には大量の書類が所狭しと乱雑に置かれており、床だってボロボロ、椅子もギシギシ音を立てるような…言ってしまえば、汚部屋だった。
「私達にあちこち掃除をさせる前に自分の場所を掃除させるべきじゃないかしら…」
呟いてから、部屋の中に居た島風を手招きする。
「…?」
可哀想に。きっと助けが来るなんて思ってもいなかったのだろう。
首を傾げるとトコトコと島風は側によって来た
「…島風ちゃん、私よ。覚えてる?」
「…ぉぅ?雷…?」
どうやらお昼に一度話していたことは覚えていたようで、私は笑みを浮かべた。
「そう!雷よっ!助けに来たわ!」
「…??」
未だ首を傾げる少女。
とはいえあまりもたついてはいられない。
「話は後よ。今は兎に角ここからー」
「島風、俺は少し席を外すからー」
慌てて振り向くと、此方を見る男と目が合った。
目の前の男と島風の会話を聞く。
おかしな事に、会話の内容から察すると島風は彼の側に侍らされている所か、寧ろ彼は引き剥がそうとしており…
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