ハーメルン
継ぎ接ぎだらけの中立区
理解者


「ワカバ、なんか震えてるねぇ」
「……人間……嫌い?」
「武者震いだ。何でもない」

相変わらず見透かすようなシロの発言にドキリとするが、真意は隠して来客を待つ。
流石に深海棲艦を匿っているということはまだ伝わっていないため、今は部屋に行ってもらうことにした。穏便に事を済ませるために我慢してもらう。

少しすると、海の向こうに影が見えた。あれは以前にも見た大発動艇。今回は鋼材を持って帰るわけではないので、1隻だけがこちらに向かっている。あれに件の来栖提督が乗っているのだろうか。
大発動艇の横、艦娘が4人。以前にも会った第二二駆逐隊の4人だ。ここに来るのはもうその4人と決まっているのかもしれない。遠目にも文月と皐月がこちらに手を振っているのがわかる。こちらからも手を振り返した。

「若葉、来栖は少し()()な奴なんだ。それだけは気に留めておいてほしい」
「アレとは」
「アレだ」

意味がわからないが、忠告が必要な人間なようなので、肝に銘じておく。

「少しぶりぃ〜」
「ああ」

まず文月が工廠に到着。その後、皐月、水無月と工廠に上がる。最後に長月が大発動艇に乗り込み、中にいるものを引っ張り出した。まず私の知らない人間であることに安心した。

「ついたぞ司令官。まさかまた酔ったとか言わないだろうな」
「大丈夫! 大丈夫だぞォ! 飛鳥に酔い止めとか事前に貰ってるからなァ!」

やたらめったら大きな男の声が響いた。と同時に大発動艇から知らない男が工廠に下りる。この人が件の来栖提督なのだろうが、その姿を見たとき、飛鳥医師が言っていた()()の意味がわかった。
来栖提督は飛鳥医師よりも大きく、聞いていた通りガタイのいい男だった。それだけなら良かったのだが、浅黒い肌にスキンヘッド、そしてサングラス。殺し屋と言われても疑問を抱かない。本来着ているであろう軍服も肩からかけるだけと、正直提督という役職には全く見えない。

「来栖、お前相変わらずだな」
「そういうお前もな飛鳥ァ。ちゃんと食ってんのかァ?」
「当然だ。食は健康の土台だ」

旧友というだけあり、面と向かった瞬間から雰囲気が明るい。軽く拳をぶつけ合った後、私の方にのっしのっしとやってくる。

「言ってた若葉だ」
「おおッ、この子がその若葉かァ!」

シロの時よりも恐怖心が先立った。近くに来ると、その大きさが痛いほどわかる。迫力が凄まじい。深海棲艦よりも恐ろしい。

「わ、若葉だ」
「俺ァ知っての通り来栖ってモンだ。階級は大佐、こいつらの頭張らせてもらってる。よろしくなァ!」

ガッチリ握手され、腕をブンブン振られる。サングラス越しだが、笑顔が眩しい。それが逆に怖い。

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