ハーメルン
継ぎ接ぎだらけの中立区
差し伸べられる手


「深海双子棲姫もスカウトしたいんだが?」
「私達もここがいいかな」
「うん……でも……1つ教えて……」

予想外に勧誘されたシロとクロだが、前以て話していた通り、行かないと返答。だが、本当に勧誘されると思っていなかったシロは、それに対して逆に質問を返す。

「私達は……貴方の敵だと思うんだけど……」

深海棲艦という種族である以上、鎮守府とは本来敵対しているものだ。敵対していないにしても、わざわざ身を寄せる必要はない。
そんな存在である深海棲艦でも御構い無しに勧誘。ただでさえ2人は艤装も持っていないが、そこすらも来栖提督には関係ないことだったようだ。
そういったところも、飛鳥医師と同じ。同じ信念を持つもの同士、気が合うのは当然のことだったようだ。

「俺ァな、侵略者と戦っているだけで、深海棲艦と戦うつもりは無ェのさ。お前さんは深海棲艦だが、侵略者じゃあ無ぇんだろォ?」
「……うん」
「なら問題無ぇな。それをスカウトして何が悪いってんだ。お前さんも当然、俺らの仲間だぜェ」

すごい理論である。あまりの超理論のため、いつもはぼんやりしていたりで表情をほとんど変えないシロですら、大きな反応を見せた。

「……ふふ、そっか……そうなんだ……。凄い人だね……貴方は」
「おう、それが俺なのさァ。尊敬してくれてもいいんだぜェ」
「うん……充分尊敬した……私はここから離れるつもりはないけど……また会いたい……かな」

まだ出会って時間は少ないが、今までに見たことがないくらいのシロの笑顔。この短時間で、飛鳥医師よりも心を開いてしまった。
嬉しい対応は人それぞれ。シロには来栖提督の接し方が一番合っていたのかもしれない。

「それじゃァな! 飛鳥ァ、次に来るときも問題起こしてんじゃあ無ェぞ!」
「起こしてたまるか。お前も……死ぬなよ」
「当たり前だ。俺達ァ死なないために戦ってんだ。誰も死なねェ。俺も、こいつらもなァ! ヌハハハッ!」

最後まで豪快に、自信たっぷりに笑って帰っていった。文月達も、見えなくなる最後までこちらに手を振ってくれた。

少しだけ名残惜しくなったが、今の私の居場所はここだ。勧誘された時にこの施設に留まることを選択したのは紛れもなく私。ここにいる方が『楽しく生きる』ことが出来ると判断したからだ。
ならば、名残惜しんでいるのは皆に失礼だ。私はこれからも、ここで楽しく生きていく。

「センセ、ほら、若葉にも言ってやれよ」
「そうよ。私達にも言ったんだから、ね!」

摩耶と雷が飛鳥医師の背中を押す。飛鳥医師がほんの少しだが恥ずかしげにしているのがわかった。珍しい表情。来栖提督が来てから、私の知らない飛鳥医師をいくつも見せられている。

「あー……若葉、この場所を選んでくれたのは、素直に嬉しい。これからもよろしく頼む」

まさかそんなことを言われるとは思わなかった。飛鳥医師は、私がここから離れると思っていたのかもしれない。

「……ああ、よろしく」

長月に倣って、飛鳥医師に手を差し出す。そういえば、まだこういったことは飛鳥医師としていなかった。お互いに信用していると示す証にもなる握手だ。
少し考えたようにも見えたが、飛鳥医師にその手を取ってもらえた。

また来栖提督に会うことはあるだろう。その時も、私はこの施設の一員だと胸を張って言えるように、楽しく暮らしていきたい。

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