ハーメルン
継ぎ接ぎだらけの中立区
暁の素性

夢で見た駆逐棲姫から、暁に気を付けろと忠告を受けた私、若葉。同じ忠告は三日月も受けており、2人同時のことのため、素直に信じることにしている。そもそも駆逐棲姫が私のことを信じてそれを話してくれているのだから、こちらからも信じなくてはいけないだろう。信頼関係というのはそういうものである。

「暁も手伝ってるのか」
「助けてもらったんだもの。あれよ、『いっしゅくいっぱんのおんぎ』ってやつよ」
「お姉ちゃんに手伝ってもらえるのはすごく嬉しいわ!」

朝のランニングを終え三日月と共に食堂に入ると、朝食の準備風景。
朝食を準備しているのはいつも通り雷。それを手伝っているのが呂500と暁。昨日来たばかりで泊めてもらえた礼をと、雷の手伝いをしているらしい。しかし少し不器用らしく、雷と比べると大分もたもたしている上に危なっかしい。
何というか、姉らしさを出そうとして空回りしているように見えなくもない。人には得手不得手というのがあるのだから、慣れた者に任せるのが一番だと思うのだが。

「ンィイ?」
「お姉ちゃん、大丈夫? ろーちゃんもちょっと心配してるわ」
「だ、大丈夫よ。暁はお姉ちゃんなんだから」

そう言う割には手元がプルプル震えている。包丁を持たせてはいけないタイプかもしれない。呂500もハラハラしている。

あんな暁にどう気を付ければいいのだろう。今の暁は、至って普通で健全な艦娘だ。改めて匂いを調べてみても、やはりこちらに対する小さな敵意すらなく、純粋に雷の役に立とうと頑張る姉でしか無いのだが。
三日月も同じように思っているようだった。暁に疑いをかけてはいるものの、あまりにも普通すぎて疑っていいか迷うほどである。

「……若葉さん」
「いや、まだわからない。今は様子を見よう」

だが、わざわざ私達の夢に出て来てまで気を付けろと言っているのだ。私達が何も感知が出来なくたって、何かされている可能性は普通にあり得る。何をされているかは皆目見当がつかないが。
暁がいないタイミングでそれとなく雷や呂500にも話しておき、一番身近なところで監視してもらうのが一番いいか。



本日は朝から来栖提督がやってくる。理由は勿論、暁からの事情聴取である。
下呂大将からの連絡は、結局昨日中には来ず、今もまだである。大淀の拠点襲撃が思いの外手こずっているのでは無いかと思われる。朝霜の証言からして、少し奥まったところに建てられており、艦娘が戦闘するのは難しいとのこと。歴戦の大将といえど、拠点攻略というのは難易度が高い。
私はいつものように事情聴取に相席。嘘発見器の能力は相変わらず便利である。駆逐棲姫に夢の中で暁に気を付けろと言われたため、監視も込みでこの場に居させてもらっている。

「曙に続いて2人目かい。よく脱出出来たもんだぜェ」

一晩眠ったことで体調が戻った暁だったが、来栖提督を目の当たりにして少し怯えていた。人相の悪さがまた足を引っ張っていた。後ろで鳳翔がクスクス笑っていたが、これもいつものこと。

事情聴取は念のため医務室で執り行われた。話している内に体調が悪くなっても困るし、そういうことをやる場所というのがそんなにないというのもある。
相席は私の他に、来栖提督の秘書艦である鳳翔と飛鳥医師。本当に何かあってからでは遅いので、艤装を装備していないにしろ護衛は必要。

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